傾いた軌道の小惑星は、小サイズの天体が少なめ
【2013年11月6日 すばる望遠鏡】
すばる望遠鏡による400個以上の小惑星の観測から、軌道が大きく傾いた小惑星は小型のものが少ない傾向であることがわかった。天体同士の衝突が高速で起こる環境ほど、大きな天体の方が小さいものに比べ生き残りやすい傾向が示されている。
火星軌道と木星軌道の間に密集する小惑星の多くは、地球などの惑星と同様に、黄道面(太陽系内で地球が公転する面)に沿った円形に近い軌道を持つ。だが、かつて木星ができたばかりのころ、その強い重力により多くの小天体の軌道がこの面から大きく傾き、互いに高速で衝突していた。
小惑星は衝突を繰り返すことで、その“人口分布”(どのサイズの天体がどれだけの数存在するか)が絶え間なく変化(衝突進化)してきた。ある程度サイズの大きい天体の場合には「大きければ大きいほど壊れにくい」という特性(強度特性)があり、これが衝突進化のプロセスに大きく影響する。
国立天文台と兵庫県立大学の研究チームはこうした強度特性と衝突進化の関連を探るため、すばる望遠鏡の主焦点カメラ「Suprime-Cam」を用いた観測で軌道傾斜角の大きい(黄道面に対する傾きが大きい軌道を持つ)小惑星441個を検出し、さらにそのサイズ分布を求めた。その結果、黄道面近くの小惑星に比べて、軌道が傾いている小惑星には小さな天体が少ないことが明らかになった。
これは、軌道傾斜角の大きい小惑星で起こるような高速衝突において、小さな天体は大きな天体よりも破壊されやすい傾向がより顕著になるという小惑星の性質を示唆している。誕生間もない木星が小惑星の軌道を乱すことで高速衝突が頻発した時代には、大きな小惑星は現在よりも破壊を免れて生き残りやすい環境だったと推測される。
小惑星の強度特性が衝突速度によって変化することがわかった今回の観測を皮切りに、今後さまざまな研究で衝突速度と強度特性の関係が明らかになっていくと期待される。それにより、太陽やそれ以外の恒星の周囲における小天体や惑星の形成進化の過程に迫ることができるだろう。