大質量星が星団の力学的進化に与える影響
【2014年3月31日 国立天文台 理論研究部】
星団の中心密度が急激に上昇するコアコラプスまでの時間は、星団中でもっとも重い星の質量に反比例することが、数値シミュレーションによる研究で明らかにされた。
星の集まりである星団では、中心密度が急激に上昇するコアコラプスという現象が見られる。コアコラプスまでの時間は、星の質量がすべて同じと仮定したモデルの星団よりも、現実に存在する天体のように質量がばらけた星団の方が短いことが知られており、星団中でもっとも重い星の質量が大きいほど短いことがわかっていた。
国立天文台理論研究部の藤井通子さんらは、星団中の星同士が引き合う重力をすべて計算し星の運動を調べるN体シミュレーション(重力多体シミュレーション)と解析的な計算による研究で、異なる質量の星を含む星団が時間の経過に伴ってどのように変化するか、特にそのコアコラプスまでの時間がどうなるかについて調べた。
シミュレーションからは、コアコラプス時間が、もっとも重い星の質量に反比例して短くなることがわかった。これは、質量関数(星の質量のばらつき)を持つ星団のコアコラプスが、もっとも重い星の力学的摩擦のタイムスケールに合わせて進むためで、N体シミュレーションで初めて確認された。
星団のコア質量ともっとも重い星の質量が同程度の場合は、ほとんどコアコラプスは起こらず、星団の中心でできた大質量星の連星によって周囲の星が弾き出され密度が下がっていく。大質量星を含む散開星団はこのような力学的進化を起こしていると考えられる。