皆既日食だけじゃない 天空のダイヤモンドリング
【2014年4月10日 ヨーロッパ南天天文台】
南米チリの超大型望遠鏡が、うみへび座の方向にある円形の惑星状星雲「Abell 33」をとらえた。2500年かけて運ばれた光は途中で大粒のダイヤをセッティング。美しいリングとなって地球に届けられている。
太陽と同じくらいの重さの恒星は、一生の終わりにさしかかると外層ガスを放出しはじめる。ガスは色鮮やかに輝く「惑星状星雲」となり、その中心に小さく残った高温高密度の「白色矮星」は数十億年の時間をかけて冷え、光を失っていく。
画像は、うみへび座方向およそ2500光年彼方にある惑星状星雲「Abell 33」を南米チリの超大型望遠鏡(VLT)でとらえたものだ。銀河団カタログでも知られる米天文学者ジョージ・エイベルが1966年に作成した惑星状星雲カタログに掲載された86天体のひとつである。元の恒星の自転の影響や、元の恒星が複数の恒星系である場合の作用などにより、惑星状星雲は不規則な形状をしているものが多いが、この天体は珍しくきれいな円形を見せている。
この形をさらに際立たせているのが、右下の明るい天体だ。手前の恒星(HD 83535)がたまたま重なって見えているもので、この偶然が美しいダイヤモンドリングを作り上げている。
Abell 33の中心付近には、星雲の材料となったガスを放出した恒星が小さな白い点となって見えている(注)。白色矮星に変化する途上だが依然として太陽より明るく、その放つ紫外線が星雲を輝かせている。
注:「Abell 33の中心星」 画像では二重に見えるが、実際に二重星なのか、たまたま重なって見えているのかはわかっていない。