宇宙誕生10億年後のガンマ線バーストに中性水素の痕跡
【2014年4月24日 国立天文台】
すばる望遠鏡を用いた観測で、宇宙誕生10億年後のガンマ線バーストに中性水素の兆候が見つかった。中性水素ガスが電離されていった「宇宙再電離」以前の時代に踏み込む研究成果だ。
宇宙の再電離とは
138億年前に宇宙が生まれた当初は、原子核と電子がばらばらの(電離した)状態にあった。誕生から約38万年経ったころ、宇宙は膨張によって冷え、それによって原子核と電子が結合し、電気的に中性な水素原子が形成された。
およそ10億年後、宇宙で初めての銀河や星が生まれ、それらが放つ紫外線で水素が再び電離されていく「宇宙再電離」が起こった。それから現在に至るまで、宇宙の水素の大半は電離状態の銀河間ガスとして存在している。
再電離がいつどのように起こったか、詳しいことを探るため、遠方宇宙(つまり昔の宇宙)の観測から、再電離が起こる前に存在したはずの中性水素ガスを検出する試みが進められてきた。
再電離以前を示す中性水素ガスを検出
戸谷友則さん(東京大学大学院理学系研究科教授)ら日本の研究チームは、2013年6月に観測された明るいガンマ線バースト(GRB:大質量星の爆発現象によるとみられる強いガンマ線放射)「GRB 130606A」を調べた。
誕生から約10億年経ったころの宇宙から届いたこの光をすばる望遠鏡で観測、分析したところ、中性度が10%以上の水素ガスの痕跡がスペクトルから検出された(画像2枚目)。GRB源の周囲でこれほど中性度の高い銀河間ガスの兆候が見つかったのは初めてで、再電離前の中性水素ガスがGRB発生当時まだ残っていたことを示唆する結果である。
遠方宇宙の観測は、再電離よりさらに前の時代に踏み込みつつある。次世代望遠鏡などを用いた今後の研究で、原始宇宙で銀河が作られるようすがさらに明らかになることが期待される。