原始重力波観測の成果に「待った」の声

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【2014年6月26日 日本科学未来館 科学コミュニケーターブログ(福田大展さん)

今年3月、インフレーション由来の原始重力波が時空をゆがめることにより宇宙背景放射に生じるとされるパターン「Bモード偏光」がとらえられ、間違いなく原始重力波によるものと判断されたと発表された。しかし現在、その真偽を問う声があがっている。


CMBの偏光に生じた、かすかなねじれパターン「Bモード」

インフレーションからの重力波によってCMBの偏光に生じた、「Bモード」と呼ばれるかすかなねじれパターン。クリックで拡大(提供:The BICEP2 Collaboration)

宇宙起源に迫る「原始重力波」の痕跡を確認したという成果は、「宇宙背景放射に刻まれたインフレーションの痕跡」として、3月18日にアストロアーツニュースでも紹介した。

しかし、同研究成果の真偽が今、厳しい目にさらされている。今月19日に米国物理学会の学会誌「Physical Review Letters」に発表された論文第3版には、研究成果とともに「銀河の塵の影響による可能性が排除しきれていない」との注意書きが追記されたのである。

ハーバード・スミソニアン天体物理学センターなどによる「BICEP2プロジェクト」による実験データで「宇宙マイクロ波背景放射(CMB)のBモード偏光を観測した」のは確かなようだ。だが問題は「何が原因で偏光したのか」である。実は原始重力波だけでなく、他にもCMBを偏光させる要因が少なくとも2つある。1つは強い重力で光が曲げられる「重力レンズ効果」、もう1つは「銀河の塵の効果」によるものだ。銀河の塵は磁場の影響で向きがそろっているため、反射する光の波の振動方向がそろって偏光する。

他にも検証が必要な点がある。原始重力波の強さを表す「r比(スカラーテンソル比)」と呼ばれる値について、天文衛星「プランク」の実験グループが昨年発表した値よりもBICEP2の発表したものが大きかったのだ。この違いには多くの研究者が注目している。

さらに、地上で観測するBICEP2は限られた領域からの光を詳しく観測しているのに対して、プランクは「全天」の光を観測しているという点も異なる。観測する範囲が広いプランクのデータが出そろえば、BICEP2のデータを検証することにつながる。

特に注目されているポイントは、論文の注意書きにあるように「銀河の塵の効果が不確か」という点だ。プランクは、この銀河の塵の効果を現在詳しく測定中で、同衛星の最新のデータは今年10月に発表されることになっている。

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