はるか遠くから届いた謎の高速電波バースト
【2014年7月17日 McGill University】
数千分の1秒というひじょうに短い現象「高速電波バースト」はこれまでオーストラリアのパークス電波望遠鏡だけで観測されてきたが、プエルトリコのアレシボ電波望遠鏡でもとらえられた。天の川銀河からはるか遠く離れたところで起こったと考えられるが、依然として発生源は謎のままである。
オーストラリアのパークス電波望遠鏡を使った観測で、わずか数千分の1秒というひじょうに短い現象である「高速電波バースト」がこれまでに複数記録されてきた。他の観測施設による同様の発見例が皆無であったため、この現象は地球上または地球近辺を起源とする信号を検出したものであると推測されてきた。
2012年11月、プエルトリコにある口径305mのアレシボ電波望遠鏡が高速電波バースト「FRB 121102」を検出した。パークスによる観測例以外としては初めての検出例で、プラズマ分散という値から推測すると、この高速電波バーストは天の川銀河からはるか遠く離れたところで起こったと考えられるという。
高速電波バーストの発生源は宇宙物理学上の謎の1つだ。ブラックホールの蒸発や中性子星の合体、ひじょうに強い磁場を持つ中性子星「マグネター」でのフレアなどが候補と考えられている。
高速電波バースト現象は1日に全天で1万回ほど発生していると推定されており、アレシボの観測結果はこの推定を肯定するものである。独・マックスプランク電波天文学研究所のLaura Spitlerさんは「この現象の明るさと継続時間、および推測される発生率は、パークスによるこれまでのバーストの検出結果の特徴とすべて一致しています」と話している。
現在も他の電波望遠鏡による高速電波バーストの検出が試みられている最中だ。オーストラリアと南アフリカ、カナダに建設中の望遠鏡が完成し本格的な観測が始まれば、多くのバーストが検出され、謎の解明が進むと期待される。