2010年 火星接近
地球のすぐ外側をまわっている惑星「火星」は、2年2か月ごとに地球に接近します。2010年の最接近は1月28日で、冬の星々に負けない赤い輝きが目立っていました。春から夏にかけても、様々な天体と並びます。
夜空での見え方
5月下旬になると、火星は1等級にまで暗くなり、最接近のころに比べて存在感も薄れてきました。しかし、まだ火星のことを忘れるには早すぎます。
6月上旬に、しし座の1等星・レグルスに火星が接近します。2つの星は明るさがほとんど同じなので、実に印象的な光景です。最接近は7日で、肉眼でも双眼鏡でも楽しめるでしょう。
火星と地球が接近する仕組み
地球が1年(約365日)で太陽をぐるっと一回りしているのに対して、火星は約687日かけて太陽のまわりを一周しています。内側をまわる地球が火星に追いついて、追い越すときが接近の時期になるのです。
地球がほぼ円に近い軌道をもつのに対して、火星はやや押しつぶされた形の楕円(だえん)軌道をまわっているため、接近する場所によってその距離が大きく変化します。もっとも近いときで約5600万km、もっとも遠いときには約1億kmと大きな差ができます。
これが、大接近と小接近が起きる理由です。
2010年1月の火星接近は、一番地球に近づく28日でも9933万kmと距離が大きく、明るさはマイナス1.2等にとどまっています。それでも、全天で一番明るい恒星のシリウスに匹敵する明るさなのですぐに目に付くことでしょう。シリウスの白と火星の赤が対照的です。また、ほとんど点に近いシリウスの光が気流によって激しくまたたくのに対して、最大で14.1秒角と小さいながらも視直径のある火星は、肉眼ではそれほどちらつかないのが印象的です。
望遠鏡で模様を観察
火星が大接近した2003年には、視直径は約25秒にまでなりましたが、2010年1月は最大でも14.1秒です。太陽系最大の惑星である木星の視直径(50秒弱)と比べたら、はるかに小さいものであることが分かるでしょう。
このように火星は小さいので、観測するためには、光学系の優秀な、大口径の望遠鏡が必要になります。近くに公開天文台があれば、最接近のころに火星を見せてもらうのもよいでしょう。
なお、アストロアーツオンラインショップでは、任意の日時に観察できる火星の模様を再現できるソフト「火星くるくる」や「火星儀」なども販売しています。