冬の夜空といえば、全天一明るい星・シリウスをはじめとした、にぎやかな星の集まりを思い浮かべます。でももし機会があれば、はるか下の、地平線や水平線あたりに注目してみてください。そこには、全天で2番目に明るい星・カノープスが輝いているからです。
カノープスとは
カノープスは-0.7等の白い恒星で、その明るさはシリウスの-1.5等についで恒星として全天で2番目です。しかし、北半球ではあまり高く昇ることのないカノープスは、かつてはその明るさよりも、南の地平線すれすれに現れる奇妙な赤い星として知られるようになりました。
中国ではこの星を、「南極老人星」や「寿星」と呼んでいます。南極老人とは、日本の七福神の寿老人あるいは福禄寿の元になった神様で、長寿をつかさどるとされてきました。そのため、この星を見ることは縁起がよいとされ、とくに、一目見ると寿命がのびるという話が有名です。
カノープスは、「りゅうこつ座」という星座の星です。りゅうこつ座は、かつては「アルゴ座」と呼ばれる巨大な星座の一部でした。アルゴ号は、ギリシャ神話に登場する船の名前です。アルゴ号の水先案内人の名前がカノープスだったと説明されることがありますが、これは間違いで、別のギリシャ神話で語られるトロイ戦争で活躍した将軍メネラウスがひきいる船団の水先案内人の名前とされています。また、古いエジプト語で「大地(すれすれ にある)黄色(に見える星)」を意味する言葉の変形とする説もあります。
どうすればカノープスを見ることができるの?
残念ながら、カノープスは南天の星なので北限から北ではまったく見ることができません。。天球上のカノープスの赤緯は-52゚42'なので、単純計算すれば北限は北緯37゚18'、福島県いわき市のあたりとなります。ただし、地平線近くの星の光は大気によって屈折されるので、実際の位置より浮き上がって見えます。これを「大気差」と呼びますが、大気差も考慮に入れると、新潟県新潟市から福島県相馬市を結んだ線あたりが北限です。標高の高いところから見ることによってさらに北でも見ることができた例があるようです。
東京付近ではカノープスの南中高度はおよそ2度です。地平線(水平線)付近は天頂付近に比べて大気の影響が大きいため、カノープスは全天で2番目の恒星とは思えないほど暗く、夕日と同じように赤く見えます。南中するのはオリオン座のベテルギウスより後で、おおいぬ座のシリウスよりも先です。その時刻は、1月中旬で22時30分ごろ、2月上旬で21時ごろで、前後30分ほどが見やすい時間です。見る場所は、南の地平線もしくは水平線が見渡せることが絶対条件です。高いところから見下ろすのも手ですが、高層ビルから見る場合は光害に邪魔されて難しいかもしれません。
おおざっぱな探し方としては、ベテルギウスとシリウスの真ん中から南にたどっていくというものがありますが、おおいぬ座の足の星、β星とζ星を結んで南に伸ばすと、より確実です。肉眼で見るのが難しくても、双眼鏡があるとよいでしょう。また、星座早見盤を用意すれば星をたどりやすくなります。
さらに簡単なのが、ニンテンドーDS用ソフト「星空ナビ」を使う方法です。「星空ナビ」には「DS方位センサーカード」が内蔵されていて、ニンテンドーDS本体の向きや動きを読み取って、向いている方向にある星や星座について調べたり、逆に天体を探すことができます。カノープスを探すときは、「星をさがそう」モードで天体の一覧からカノープスを選べば、あとは矢印の指示に従ってDS本体を動かすだけです。
関連リンク
ステラナビゲータで再現してみよう
カノープスを見るためには、あらかじめいつ、どの位置に見えるかを正確に知っておかなければいけません。そんなときには、ステラナビゲータが便利です。時刻や緯度による違いはもちろん、大気差の影響や、周囲の地形も考慮した正確な再現が可能です。