お月見といえば「9月の満月」と思われがちですが、今年2016年の場合、中秋の名月は9月15日で満月は9月17日と2日もずれています。このように、中秋の名月は満月とは限りませんし(むしろ満月でないことのほうが多い)、10月にずれ込むこともあります。中秋の名月の日は、どのように決まるのでしょうか。
地球から一番近いところにある身近な天体、月。模様をウサギに見立てるなど、古くから人々に親しまれています。とくに天保暦(旧暦)八月十五日の月は「中秋の名月」として有名で、供え物をしてお月見をする習慣があります。
暦の関係で、中秋の名月は必ずしも満月になるとは限りません。2016年は9月15日が「中秋の名月」で、満月の日の2日前です。澄んだ夜空に浮かぶ、少しだけ欠けた名月を眺めてみましょう。
お月見といえば「9月の満月」と思われがちですが、今年2016年の場合、中秋の名月は9月15日で満月は9月17日と2日もずれています。このように、中秋の名月は満月とは限りませんし(むしろ満月でないことのほうが多い)、10月にずれ込むこともあります。中秋の名月の日は、どのように決まるのでしょうか。
「中秋の名月」には月を眺めて供え物をする習慣がありますが、そもそも「中秋の名月」とはなんでしょうか。
昔から、秋こそが月を見るのに良い季節とされていましたが、秋である七月〜九月のちょうど真ん中の日が「中秋」、八月十五日です。そのため、八月十五日を「中秋の名月」と呼んで月を愛でることにしたのです(似た言葉の「仲秋」は「八月」を指します)。
なぜ、秋に月を見るのでしょう。その理由は、月の高さと天気です。太陽が天球上で通る道は、夏は高く、冬は低いことはご存じでしょう。月の通り道も太陽とほぼ同じですが、満月は地球から見て太陽の反対側にありますから、夏は低く冬は高くなります。そこで、ちょうど見上げるのに適した高さの満月となると、春か秋になります。しかし「春がすみ」や「秋晴れ」という言葉があるように、天気の良さでは断然秋。そこで、秋が月見のシーズンとなったとされています。
「秋が七月〜九月」「中秋の名月は八月十五日」というのは現在の暦ではなく、天保暦(いわゆる「旧暦」)による日付です。現在、正式に旧暦を発表する機関はありませんが、かつての法則と同様に太陽と月の動きを元にして旧暦を計算することは可能です。具体的には「秋分の日(祝日としてではなく、天文学としての日付)以前の、一番近い朔(新月)の日を1日目(旧暦八月一日)として、15日目を中秋とする」と決められます。2016年の場合、秋分の日は9月22日、直前の朔の日は9月1日です。
このようにして中秋(旧暦)を決めると、ほぼ現在の暦から1か月遅れていることから、中秋の名月は9月になることが多いのです。しかし、「閏(うるう)月」と呼ばれる月が入るときにはさらに遅くなるため、中秋が10月になってしまうこともあります。たとえば来年2017年には「閏5月」があるため、中秋は10月4日になります。
さて、「十五夜」というのは「新月の日を1日目としたときの15日目の夜」ということですが、この日に満月になるとは限りません。
ある日付が「満月の日」というのは、その日のうちに「月が望、つまり地球から見てちょうど太陽の反対方向を通る瞬間を迎える」ことを意味します。「新月の日」も「月がちょうど太陽と同じ方向を通る瞬間(朔)」を含む日です。
新月から新月まで(月の朔望周期)は約29.5日なので、新月から満月までは平均すると約14.8日ということになります。たとえば「1日の午後11時に朔」だとすると、十五夜は(14日後の)15日となりますが、望は平均的には14.8日後の「16日午後6時ごろ」なので満月の日は16日になり、1日ずれるわけです。
さらに、月の軌道が楕円であることなど様々な理由で、朔から望までの期間が14.8日からずれることもあります。こうした複合的な理由から、十五夜と満月の日は一致しないことが多くなるのです。
でも、やっぱり「秋の真ん中」は八月十五日なので、たとえずれていても十五夜が中秋の名月。このように立派な根拠があるのですから、しっかりと月を眺めたいものですね。
ちなみに、2016年の場合は9月17日の4時ごろが望です(朔からの日数は15.42日)。つまり、16日の宵から17日明け方にかけては望の直前の月が、「満月」17日の宵には望から半日以上過ぎた後の月が見えることになります。
※2021年から2023年は日付が一致、その他の年は名月が1日か2日早い。
年 | 中秋の名月 | 満月 |
---|---|---|
2016年 | 9月15日 | 9月17日 |
2017年 | 10月 4日 | 10月 6日 |
2018年 | 9月24日 | 9月25日 |
2019年 | 9月13日 | 9月14日 |
2020年 | 10月 1日 | 10月 2日 |
年 | 中秋の名月 | 満月 |
---|---|---|
2021年 | 9月21日 | 9月21日 |
2022年 | 9月10日 | 9月10日 |
2023年 | 9月29日 | 9月29日 |
2024年 | 9月17日 | 9月18日 |
2025年 | 10月 6日 | 10月 7日 |
ここに挙げるものはいずれも「天文学的な用語」ではなく、また「一般に広まった、定着した」とは言えない言葉もあります。身の回りの話題として取り上げるのは(これら以外の呼び方も)自由ですが、いかにも公的、学術的な用語であるかのように誤認させたり、超常的な話題と結び付けて大げさに語られたりすることには気をつけたいものです。
中秋の名月(十五夜の月)は、芋をお供えすることから「芋名月」とも呼ばれています。
なお、広い意味では十五夜は旧暦八月十五日に限ったことではなく、旧暦の毎月十五日の夜を指す言葉です。
十五夜の翌日の月は十六夜(いざよい)と呼ばれます。「いざよう」とは「ためらう」という意味で、前日十五夜の月よりも遅くためらうようにして出てくることからの呼び方です。
南米チリのALMA電波望遠鏡は66台のパラボラアンテナから構成されており、このうち日本が開発した16台には「いざよい」という愛称がつけられています。
十六夜以降の月には、順に「十七夜:立待月(たちまちづき)」「十八夜:居待月(いまちづき)」「十九夜:寝待月(ねまちづき)」「二十夜:更待月(ふけまちづき)」の呼び名があります。立待月は「立って待っていると出てくる月」という意味で、その後「座って」「寝て」「さらに夜が更けて」となります。
十五夜から約1か月後となる旧暦九月十三日の月は「十三夜」「後(のち)の月」と呼ばれており、この日にもお月見をする習慣があります(十五夜と同様、毎月十三日の夜が十三夜ですが、とくに九月十三日を指すことが多いです)。2016年は10月13日です。
豆や栗をお供えすることから「豆名月」「栗名月」とも呼ばれます。
近年、一年のうちでもっとも大きく見える満月を指して「スーパームーン」という言葉が使われることがあります。2016年の場合は11月14日の満月がこれに当たります。
もともとは占星術師が提唱した言葉のようで、天文学的な定義はありませんが、「月と地球が最接近するタイミングの前後で、満月(望)もしくは新月(朔)となったとき、その月をスーパームーンと呼ぶ」というのが一つの説です。この意味では「タイミングが合えば、当年で2番目の大きさの満月でも」「新月でも」スーパームーンとなりますが、「満月のうちで一番大きく見えるもの」が、とくに広く話題になるようです。
月は地球の周りを楕円軌道で公転しているので、地球の中心から月の中心までの距離は約36万kmから40万kmの間で変化します。また、最接近の距離も一定ではなく、「近い最接近」と「遠い最接近」があります。2016年の場合、一年を通じて月と地球が最接近するのは11月14日の20時20分ごろで、その約2時間30分後に満月(望)となり、今年一番大きい満月が見られることになります。
1か月の間に2回満月があるとき、その2回目の満月のことを「ブルームーン」と呼ぶことがあります。もともとは「一つの季節の間に4回満月があるときの3回目の満月」を指す言葉だったようですが、現在では「ひと月で2回目の満月」のほうがよく知られています。実際に満月が青く見えるわけではありません。
前回は2015年7月31日の満月がブルームーンでした。次回は2018年1月31日の満月がブルームーンですが、この日は皆既月食が起こるので「ブルームーンが赤く見える」ことになります。
星ナビ.comの「こだわり天文書評」で月に関する本の書評を掲載しています。科学的に、文化的に、あるいは鑑賞の対象として、月をより深く知ってみましょう。
「アストロアーツ オンラインショップ」では月を観察するのに適した扱いやすい天体望遠鏡をはじめ、月球儀やBlu-rayなど様々なグッズを扱っています。
中秋の名月以降も、月が関係する様々な天文現象が起こります。2016年中に見られる主なものをピックアップして紹介します。
月が恒星や惑星の手前を通り過ぎて隠す現象が星食(恒星食、惑星食)です。とくに、明るい1等星や惑星が隠され再び出現する現象は双眼鏡や小型の天体望遠鏡でもじゅうぶん楽しめます。食の前後に月と明るい星が大接近している光景も、肉眼や双眼鏡で面白い眺めとなります。
スーパームーンの2日後、11月16日の未明には、おうし座の1等星アルデバランが隠される星食が起こります。アルデバランは2時過ぎに月齢16の月の明るい縁へ潜入し、3時半ごろに暗い縁から出現します(時刻は観察する場所によって異なります)。潜入と出現は一瞬の現象なので見逃さないようにしましょう。とくに出現は暗い縁から急に現れるので、時刻と位置をよく確かめておきましょう。
このほか、夕空で細い月と金星が並んで見える現象なども起こります。また来年8月には月が太陽を隠す皆既日食が北米で見られます。「現象ガイド」などを参考に、月が作り出す美しい天文現象を楽しんでみてください。