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木星とガリレオ衛星(2019年)

2019年の木星は6月〜9月ごろに観察シーズンを迎えます。やや高度が低いもののマイナス2等級と明るいのでよく目立ち、街中でも簡単に見つけられます。

木星を双眼鏡で観察すると、木星の周りを巡る4つのガリレオ衛星が見えます。日々並び方が変化する様子は見ものです。天体望遠鏡を使うと木星表面の縞模様や大赤斑も観察でき、さらに面白くなります。

木星を見つけよう

夜半の明星

「夜半の明星」とも呼ばれる木星は、月を別とすれば夜空で一番目立って明るく見える天体です。建物などに遮られなければ、街明かりがあるようなところでも簡単に見つかります。

2019年の木星は「へびつかい座」にあります。「さそり座」の1等星アンタレスや、木星の東に見える土星とともに、夏の宵空を飾ります。空が暗いところでは木星と土星の間に天の川も見えるでしょう。

2019年6月中旬 22時の星図

2019年6月中旬 22時の空(東京)。画像クリックで表示拡大(ステラナビゲータで星図作成、以下同)。
4月(0時)5月(23時)6月(22時)7月(21時)8月(20時)9月(19時)10月(18時)11月(17時30分)

木星に関する諸現象

2019年4月から11月ごろまでに起こる、木星と月との接近などは、以下のとおりです。このうち月との接近は、やや間隔は大きくなりますが前後の日にも見ることができます。

日付 現象備考
4月24日 月(月齢18)と接近
›› 解説
未明から明け方
5月20日
〜21日
月(月齢16)と大接近
›› 解説
深夜から明け方
6月11日 衝(しょう)
›› 解説
太陽の正反対に来る
(深夜に南に見える)
6月16日
〜17日
月(月齢13)と大接近
›› 解説
夕方から明け方
7月13日
〜14日
月(月齢11)と接近
›› 解説
夕方から未明
7月下旬
〜8月下旬
さそり座の
アンタレスと並ぶ
最接近8月13日ごろ
8月 9日 月(月齢8)と並ぶ宵から深夜
8月10日 月(月齢9)と並ぶ夕方から宵
8月12日 留(りゅう)この日を境に、天球上を西→東に動く(順行する)ようになる
9月 6日 東矩(とうく)太陽から90度東に離れる
(日没のころ南に見える)
黄道座標系では9日
9月 6日 月(月齢7)と大接近
›› 解説
夕方から宵
10月 3日 月(月齢5)と並ぶ夕方から宵
10月 4日 月(月齢6)と並ぶ夕方から宵
10月31日 細い月(月齢3)と接近
›› 解説
夕方
11月下旬 金星と大接近
›› 解説
最接近24日ごろ
11月28日 細い月(月齢2)、金星と接近
›› 解説
夕方

星図(6月11日 衝)

木星は、12月上旬以降は太陽に近づいて見えにくくなり、12月下旬に合(太陽と同じ方向になること)を迎えて見えなくなります。その後は来年2月上旬ごろから、明け方の南東の空に見えるようになります。

土星も見ごろ

今年の夏から秋は、木星とともに土星も見ごろを迎えます。空が暗ければ、天の川の西に木星、東に土星が輝く、すばらしい光景を眺めることができるでしょう。

【特集】環のある星 土星(2019年)

モバイルツールでシミュレーション

iOS用の「iステラ」「iステラ HD」やアンドロイド用「スマートステラ」などのモバイルアプリを使うと、端末を向けた方向の空を画面にシミュレーション表示するので、木星のある方向や周りの星、星座の名前が簡単にわかります。日時を変化させて月との接近をシミュレーションすることもできます。

他の製品は ›› モバイル製品情報

スマートステラでのシミュレーション

木星の位置や周囲の星座、星の名前をスマートステラで表示。コンパス連動時には実際の空で見える方向までナビゲーションしてくれる。画像クリックで表示拡大。

ガリレオ衛星や縞模様を観察しよう

ガリレオ衛星

木星には70個以上の衛星が見つかっています。そのうちイオ、エウロパ、ガニメデ、カリストは大型の衛星で、双眼鏡や小型望遠鏡でも存在がわかります。1610年にガリレオが発見したことから、この4つはとくにガリレオ衛星とも呼ばれています。

ガリレオ衛星のうち、一番木星に近いイオはわずか2日弱で木星の周りを一回りします。一番外側のカリストも一回りするには約17日ほどしかかかりません。このため、ガリレオ衛星の位置は目まぐるしく変化します。木星の裏に回ったり木星の影に入ったりして、見えなくなっていることもあります。

衛星の動きをシミュレーション動画にしたので、観察の際の参考にしてください(I:イオ/II:エウロパ/III:ガニメデ/IV:カリスト)。図は上が北になっています。天体望遠鏡では像が回転していることが多いので見比べるときには注意しましょう。

2019年4月から10月のガリレオ衛星の動き。上が北。衛星は実際よりも大きく描画している。囲み内は木星の拡大像(正立像)(ステラナビゲータでシミュレーション)。

他の動画は ›› アストロアーツYouTubeチャンネル [YouTube]

縞模様と大赤斑

天体望遠鏡で木星を見ると、縞模様があるのがわかります。口径5cm程度の小型望遠鏡でも、目立つ2本を確認できるでしょう。

口径が大きくなると、さらに多くの縞模様が見えてきます。気流が安定しているとき(風がないとき)や木星が南の空に見えるとき(昇った直後や沈む直前ではないタイミング)のほうが条件良く見えるでしょう。

さらに、大赤斑という模様も見えるかもしれません。大赤斑は直径が地球数個分もある、巨大な台風のようなものです。木星は約10時間で自転しているので、大赤斑が裏にまわっていることもあります。タイミングを見計らって観察するようにしましょう。

木星の表面の模様

探査機「カッシーニ」が撮影した木星。縞模様や大赤斑(右下の赤い渦巻き)が見える。左下の黒い丸は衛星の影。画像クリックでリリース元ページへ(クレジット:NASA / JPL / University of Arizona)。

公開天文台や科学館などで開催される観望会(観察会、観測会)では、大きい望遠鏡で木星を見ることができます。お近くのイベント情報は、全国プラネタリウム&公開天文台情報ページ「パオナビ」で検索してみてください。

ステラナビゲータで見え方をシミュレーション

天文シミュレーションソフトウェア「ステラナビゲータ」では、木星の見え方やガリレオ衛星の位置などを正確にシミュレーションできます。観測や撮影に便利です。

オンラインショップ

アストロアーツのオンラインショップでは、天体望遠鏡や双眼鏡を多数取り扱っています。縞模様や衛星の動きを、自分の目で観察してみましょう。ライトやクッションなどの便利グッズや、太陽系のことが詳しくわかる書籍などもあります。

天体望遠鏡や双眼鏡はアストロアーツオンラインショップで

木星を撮影してみよう

カラーCMOSカメラを天体望遠鏡に接続して惑星を動画撮影し、その中から写りの良いフレームだけを選んで多数枚コンポジットすると、精緻で滑らかな惑星像を得ることができます。天体画像処理ソフトウェア「ステライメージ」を使うと、動画からのコンポジットはもちろん、カラーバランス調整やディテール強調まで簡単かつ詳細に行えます。画像を「作品」に仕上げてみましょう。

惑星を撮影しよう CMOSカメラで動画撮影、ステライメージで処理

「星ナビ」連載記事:

  • 2018年6月号:「CMOSカメラで惑星を撮る 1. 惑星撮影用の望遠鏡とカメラ」
  • 2018年7月号:「CMOSカメラで惑星を撮る 2. 惑星撮影用の準備と実際」
  • 2018年8月号:「CMOSカメラで惑星を撮る 3. 惑星の動画撮影」

星ナビ2018年6月号 紹介記事

星ナビ2018年7月号 紹介記事

星ナビ2018年8月号 紹介記事

木星に関するマメ知識

太陽系最大の惑星

木星は大きさ(赤道部分の直径)が地球の約11倍、質量が地球の約320倍ある、太陽系の惑星の中で最大の天体です。主成分は水素やヘリウムといった気体で、巨大ガス惑星に分類されます。また、約10時間で自転しており、これは太陽系の惑星の中で最速です。

表面の模様

特徴的な表面の模様は、木星の雲を見ているものです。雲は主にアンモニアやその化合物でできていますが、少量の他の物質が太陽光と反応することでオレンジ色に見えます。明るい部分(帯)は上昇気流の部分、暗い部分(縞)は下降気流の部分で、その中に見える大赤斑や白斑は木星の嵐です。まれに、木星に小天体が衝突し、その痕跡の模様が地上や宇宙望遠鏡で観測されることもあります。

また、非常に強い磁場を持っているため、北極や南極の周辺でオーロラが発生することもあります。

星座の中の動き

木星の公転周期は約12年です。したがって、地球から見ているとおよそ1年ごとに、星占いの星座を1つずつ進んでいくということになります。干支の12年で空を一巡することから、中国では「歳星(さいせい)」とも呼ばれます。

木星探査

1970年代に「パイオニア計画」や「ボイジャー計画」によって探査機が木星に接近し、表面の詳細な観測や環の発見、新たな衛星の発見などの成果を挙げました。

1989年に打ち上げられた探査機「ガリレオ」は、史上初めて木星を周回しながら観測を行いました。ガリレオは1995年から2003年にかけて木星やその衛星を観測し、数々の美しい画像や科学データをもたらしました。また、土星探査機「カッシーニ」や冥王星・太陽系外縁天体探査機「ニューホライズンズ」も、それぞれのメインターゲットへと向かう途中に木星を観測しています。

2011年8月に打ち上げられ2016年7月に木星に到着した探査機「ジュノー」は、53日周期で木星の北極と南極を通る楕円軌道を周回しながら、木星の大気や磁場、内部の様子などを調べています。

また、ハッブル宇宙望遠鏡によって衛星エウロパに間欠泉らしいものがとらえられたり、日本の科学衛星「ひさき」が木星磁気圏の観測を行ったりするなど、地上の天体望遠鏡や地球周回の衛星からの観測も活発に行われています。

木星の南極

2017年12月にジュノーが撮影した木星の南極。画像クリックでリリース元ページへ(クレジット:NASA / JPL-Caltech / SwRI / MSSS / Gerald Eichstädt)。

イルカのような模様

2018年10月にジュノーが撮影したイルカのような模様(クレジット:NASA / JPL-Caltech / SwRI / MSSS / Brian Swift / Sean Doran)。

大赤斑と白斑

2018年12月にジュノーが撮影した大赤斑と白斑(クレジット:NASA / JPL-Caltech / SwRI / MSSS / Gerald Eichstädt / Sean Doran)。