■ Part-8 しし座流星群極大日の天気はこうだった
2001年11月18〜19日のしし座流星群は、ご覧になることができたでしょうか? この特集最後のページは、このしし座流星群極大日の天気がどうだったのかについて、書きたいと思います。 12/08 update
今回のしし座流星群、本当に夢のような一夜でしたね。天文ファンなら誰もが夢見た“星が降る夜”。本当にやってきてくれました。嬉しいかぎりです。
天気のほうは、残念ながら日本海側では朝まで雲が残った地域があったようですが、太平洋側では多くの地域で晴れ、大勢の方が流星を見ることができたようです。今回の天気は、太平洋側ならまず晴れそう、どこに行ってもまずOK状態でしたので、多くの方は自宅の近くや、いつも星を見に行っている場所に出かけたようです。
下は、2001年11月19日朝3時の雲画像(赤外画像)と、夜が明けたあとの2001年11月19日朝8時の雲画像(可視画像)です。
● 2001年のしし座流星群極大時刻の気象衛星ひまわりによる赤外画像(左)と、翌朝朝8時の可視画像(右)
左は、2001年のしし座流星群極大日の極大時刻の気象衛星ひまわりによる赤外雲画像。極大時刻での雲のかかりぐあいがわかる。左は、翌朝8時の可視画像。この時間でも極大の3時と大きく雲の分布は大きく変わっていない。また、可視画像のほうが下から見上げた雲の濃さによく対応している。可視画像方が雲の分布はわかりやすい。赤外画像は、東京大学生産技術研究所高木研究室の Satellite Image Archive for Network より。可視画像は、高知大学気象情報頁より。
天気のほうは、弱い冬型から移動性高気圧に移り変わるころに、しし群の夜がきました。雲の分布は、「Part-3 気圧配置と晴天域の関係」に書きました、「3-2.冬型の気圧配置になった場合」に近い形です。ただ、冬型はそれほど強くなく、雲に隙間もあったようですので、日本海側でも一晩中空を見ていれば、数は少ないものの流星を見ることはできたことでしょう。今回のしし座流星群は火球クラスの明るいものもたくさん流れましたので、少しくらい薄い雲があっても、それを透かして見ることができたのではないかと思います。
反面、太平洋側でも青森・福島・千葉・神奈川・静岡などで雲がかかった地域があったようです。福島に出かけた方からは、今曇ってるけど、どこに動けばいい? と電話が入りました。富士山も夜半前には雲がかかっていたようです。幸い車で出かけた方々は、事前に雲の動きを読み移動できたようで、3時台のピークのころには晴天域に達したもようです。
今回のしし座流星群が数多く見られた日の天気分布は、以下のとおりでした。
●17〜18日の夜:
地域 太平洋側 日本海側 解説 北日本 晴れ 曇り 弱い冬型により、全国的に太平洋側で晴天、
日本海側で曇天。北関東の山岳部も曇天。東日本 晴れ 曇り 西日本 晴れ 曇り 南西諸島 晴れ ●18〜19日の夜:
地域 太平洋側 日本海側 解説 北日本 晴れ 曇り 青森・福島では太平洋側でも雲り
千葉・神奈川・静岡でも曇りだったが
それ以外の地域では、ほぼ太平洋側で晴天、
日本海側で曇天であったもよう東日本 晴れ 曇り 西日本 晴れ 曇り 南西諸島 晴れ
今回のしし座流星群の日の天気を「Part-5 しし群の日の天気「実践編」」風にまとめてみますと、以下のとおりになります。
● 2週間前
「1ヶ月予報」から、平年より晴天日数が多くやや寒い予報が出ていました。これは、11月後半は冬型の気圧配置の日が多くなりそうとの予想されていたことによります。これはだいたい当たっていて、実際に太平洋側では晴天の日が多くなりました。
● 1週間前
1週間前から3日前までは、しし座流星群の極大日の直前まで弱い冬型が続くとの予想が続いていました。肝心の11月19日には、高気圧または等圧線が閉じない高圧部が北に偏って張り出す予報でした。これも大まかには当たっていました。大陸から張り出した高圧部は、19日の日中には移動性高気圧となって、その中心が北日本へと進んだのですが、夜が明ける前までは、その効果は弱く、むしろ弱い冬型に近い雲の分布となりました。
● 2日前
予想通りの弱い冬型が続いてきました。2日前にはそれまでの北日本の太平洋側のみ晴天の予想が一転して、全国的に晴れそうな見込みになりました。実際には、このときの予報どおりまでには好転せず、日本海側では雲が残ったところも多かったようです。
● 1日前
再び予報は後退して、3日前の予報と同程度になってしまいました。行く先を太平洋側に想定して、翌日に備えました。この日の天気予報はどれを見てもしし座流星群の天気に触れていて、社会的にも関心が高まっていることを感じました。
● しし座流星群極大日
朝7時前の天気予報では、再度予報が好転し、移動性高気圧に覆われる見込みに。太平洋側なら、ここはどこへいってもしし座流星群を見れそうな状態になってきました。12時前の天気予報でそれを再度確認。観測地は、同行してくださった方がよく行かれている木曾御岳に決定しました。しかし、しし座流星群気象情報の直前予報記事を書いていたために、出発がかなり遅れてしまいます。結局、日が暮れるころに出発したのでした。
今回は御嶽山まで北まわりで行きました。関越道、上信越道と行く間はやや雲のあるものの、ずっと晴天。長野道に入り姥捨のサービスエリアに入り19時前の天気予報を見た後、モバイルPCでの気象サイトめぐりをして、途中の山岳域では雲があるものの、塩尻や木曽福島以西は晴天であることを確認。いろいろな方から天気の問い合わせが入ったのもこのころでした。予想通りの天気の推移をしながら、22時前に御岳山に到着。車を降りてみると満天の星空。天の川がよく見える最微等級6等の空です。22時台は、たまにおうし座流星群が流れる程度の静けさ。それが、23時を過ぎると、長大経路の明るい火球が何本も空を横断するようになりました。「しし座流星群の夜」の幕開けです。その後はみなさんもご存知のとおり、1分間に100個を超える数え切れないほどの流星を、まさに「浴びる」ことができたのでした。
最微等級6等、一晩中全天快晴の御岳の空で見ていた印象をいくつか。ピークは数字で出ているほど鋭くなく、2時過ぎから4時30分ごろまで、なだらかに続いていたようにみえました。ストロボを焚いたように光る火球が何度もあり、流星痕がいくつも同時に空のあちこちで見えていました。空の透明度がよく、地平線近くの流星が遠くまで見えたので、寝転んで天頂や放射点付近を見るより、立ち上がって地平線近くを見たほうが、数多くの流星を見ることができたのが意外でした。放射点の反対側の空をみていると、流星がまた一点に収束するかのように、すぼまって見えたことや、日が昇りかけて、空が真っ青になっても、まだいくつも明るい流星がみえたことなどが印象的でした。
以上で、今回の特集を終わりたいと思います。連載途中にも、何度かご連絡をいただきましたが、もし何か思うところがありましたら、ご意見ご感想をお寄せいただければと思います。ともかく、待ちに待った流星雨を多くの方が見ることができ、本当によかったですね。天気の予想のしがいもありました。
それでは。
一時はかなり心配されていた、しし座流星群極大日の天気ですが、結局弱い冬型から移動性高気圧へと気圧配置が変化する中、流星群の極大を迎えることになりました。このため、日本海側の地域では、残念ながら雲がかかってしまった地域が多かったものの、太平洋側では、多くの地域で晴天に恵まれて、多くの方がしし座流星群をご覧になることができたようです。
● 2001年のしし座流星群極大時刻の気象衛星ひまわりによる赤外画像(左)と、翌朝朝8時の可視画像(右)
左は、2001年のしし座流星群極大日の極大時刻の気象衛星ひまわりによる赤外雲画像。極大時刻での雲のかかりぐあいがわかる。左は、翌朝8時の可視画像。この時間でも極大の3時と大きく雲の分布は大きく変わっていない。また、可視画像のほうが下から見上げた雲の濃さによく対応している。可視画像方が雲の分布はわかりやすい。赤外画像は、東京大学生産技術研究所高木研究室の Satellite Image Archive for Network より。可視画像は、高知大学気象情報頁より。
上図は、今回2001年のしし座流星群の極大日の雲の分布です。左は、2001年のしし座流星群極大日の極大時刻の気象衛星ひまわりによる赤外雲画像。極大時刻での雲のかかりぐあいがわかります。冬型はだいぶ崩れてきたものの、日本海側では、残念ながら、この時刻まだ雲が残ってしまったようです。それに対して太平洋側では多くの地域で、晴天であったことがわかります。
上図の右は、翌朝8時の可視画像。この時間でも極大の3時と大きく雲の分布は変わっていません。また、赤外画像は雲の高さ(正確には雲頂温度)に対応しているのに対し、可視画像は雲の濃さ(粗密)に対応しています。このため、こちらの方が雲のコントラストがはっきりしていることもあいまって、可視画像のほうが、夜空の下から見上げた雲の濃さの実感とよく整合していることでしょう。
みなさんがしし座流星群をご覧になったときの空のようすの実感と、これら雲画像との対応はいかがでしょうか?
明日以降は、もう少し細かく、このしし座流星群の極大日の天気の推移について、みてゆきたいと思います。
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