流星観測のすすめ 眼視編
眼視観測のポイント
- ◎特徴・利点
- 世界中で取り組まれている手法
- 高価な機材はいらない
- 慣れてくると暗い流星も記録できるようになる
- ×欠点
- 観測者間による能力の格差がある
- 体調、集中力、疲労の蓄積などの影響も受ける
- 特に初心者は、見逃しや見間違いが発生しやすい
計数観測とは、一時間あたりの流星数(できれば等級なども)を記録するもので、世界中で行われている観測方法である。
計数観測には、個人計数観測(一人で全天をカバー)と団体計数観測(複数人で観測エリアを分担)があるが、団体計数観測は人数が揃わないとできないし、出現数を計算するのにいくつかの数式を用いなければならないので、現在ではあまり用いられなくなった。ここでは流星観測者の主流でもある個人計数観測を紹介する。
必要な道具は、記録文具またはレコーダ、時計(秒まで正確に合わせる)、減光した懐中電灯などである。星図や星座早見盤があると、より便利だ。
まず、観測年月日時、観測時の平均雲量(Cl、全天に占める雲や障害物の割合。0〜10の11段階)、最微光星(Lm、見える最も暗い星の等級)を記録する。
流星が出現したら、その等級を書く。丸で囲むのがペルセウス座流星群の流星(群流星)、囲まないのがその他、と区別しておこう。群流星かどうかは、経路を逆にたどって放射点方向から流れたかどうかを確かめ、さらに放射点近くでは見かけ上経路が短くなる効果があることや、流星の色や速度の特徴などを総合的に考え合わせて判定する。群流星かどうかの判定は、慣れてくればそれほど迷うことなくわかるようになるだろう。また、流星が流れた直後に煙のように残る流星痕に気づいたら“T”(train=流星痕の意)と書こう。観測は最低で30分、できれば1時間単位で行う。
マイナス3等級以上の明るい流星は火球と呼ばれ、通常の流星とは区別している。出現時刻(秒までできるだけ正確に)、出現座標(星座名、星名など)、等級などを記録しておこう(詳細なフォーマットは写真編で紹介)。
さて、貴重な観測データは正式に報告してみてはいかがだろうか。日本流星研究会では、流星数や火球情報を集めている。ホームページからたどると、それらの報告フォーマットがあるので、参照するとよい。
流星を観測するときは銀マットなどを敷いて寝転がるか、ビーチベッドを使うと楽だ。寝袋も用意しておくといい。虫に刺されたり夜露や夜風で身体が冷えたりするので、長袖長ズボンを着用し、虫よけなどを用意しよう。眠気覚ましにはガムやチョコも効果的だ。
流星を見逃さないように観測し続けるには、手元を見ずに用紙に書き込んでいく“さぐり書き”という手法が有用だ。ここでは、筆者の行っている方法を紹介する。
円筒型蓋付きタッパーに切れ込みを入れ、その中にレジスター用のロール紙を収めて切れ込みから出す。ロール紙は文房具店で、タッパーは台所用品がある店で入手できる。タッパーの切れ込みは、釘をガスコンロなどで熱し、それを当てて溶かすと簡単に入れられる。仕上げはカッターなどで。
これで思ったよりもしっかりとした字が書ける。大きめの文字で、横に2個の流星を記録するくらいが適当だ。書いたら指一本分だけロール紙を引っ張り出す。これを使うようになってから、観測するときにノートの出番はなくなった。
さぐり書きグッズの他に、ボイスレコーダがあれば、記録をとるのに積極的に利用したい。とくに火球観測では記録の即時性で威力を発揮する。さらに“しゃべる時計”は、暗闇でも時刻を声で教えてくれるので、さぐり書きと合わせて使うとちょうどよい。