従来の理解に反する、強い磁場を持つ中性子星からのジェット

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電波望遠鏡VLAによる観測で、強い磁場を持つ中性子星からジェットが噴き出していることが確かめられた。従来はこのような天体からジェットは放出されないと考えられており、新たな種類のメカニズムが働いている可能性がある。

【2018年10月3日 NRAO

2017年10月、NASAの天文衛星「ニール・ゲーレルス・スウィフト」がX線で突然明るくなった天体「Swift J0243.6+6124」(以後Sw J0243)をカシオペヤ座の方向に発見した。その正体は、大質量の星が一生の最期に起こした超新星爆発のあとに残った、高密度の天体である中性子星だ。Sw J0243は太陽よりも質量が大きい星と連星系をなしており、その伴星から引き込んだ物質によって、Sw J0243の周囲には回転する降着円盤が形成されている。

オランダ・アムステルダム大学のJakob van den Eijndenさんたちの研究チームは、米・国立科学財団のカール・ジャンスキー超大型干渉電波望遠鏡群VLAを使ってSw J0243を2018年1月まで継続観測した。そして、日数が経つにつれてX線と電波の放射が弱くなっていったことや電波放射の特徴から、この電波が高速のジェットによって放射されているものであると確信した。

降着円盤を持つ中性子星では、光速に近い速度まで加速されたジェットが円盤の垂直方向(中性子星の両極方向)に放射される。ただし、Sw J0243のように非常に強力な磁場を持つ中性子星の場合は、その磁場の影響でジェットの形成が妨げられると考えられてきた。「Sw J0243におけるジェットの発見は、長年のアイディアとは相反するものです」(van den Eijndenさん)。

中性子星周囲の磁力線、降着円盤、外へ向かって放出されるジェットのイラスト
中性子星周囲の磁力線、降着円盤、外へ向かって放出されるジェットのイラスト(提供:ICRAR/Universiteit van Amsterdam)

このような現象が見られる理由として、研究チームでは、降着円盤内におけるジェットの発生領域が中性子星から離れており、磁場の影響が弱いという可能性を挙げている。

別の可能性として、ジェットを加速するエネルギーが中性子星の自転によってもたらされているというアイディアも考えられている。「自転によってエネルギーを獲得するというアイディアでは、ゆっくり自転する中性子星からのジェットはかなり弱いものとなると予測されています。これはまさに、Sw J0243に見られるものと一致しています」(アムステルダム大学 Nathalie Degenaarさん)。今後もし同種の天体が見つかれば、中性子星の自転でジェットが形成されるという説を確かめられるかもしれない。

また、Sw J0243からのジェットの発見は、同様に強い磁場を持つ「超高輝度X線パルサー」と呼ばれるカテゴリーの天体もジェットを放射する可能性も示唆している。「今回の発見は、強い磁場を持つ天体におけるジェットの形成に関する考えを改める必要性を示しただけでなく、エキサイティングで新しい研究分野の幕を開くものでもあります」(Degenaarさん)。

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