二重棒渦巻銀河の内側のピーナツ型構造
【2018年11月15日 カナリア天体物理研究所】
渦巻銀河の複雑な形や構造は、銀河の進化を理解するための鍵として研究者を魅了し続けている。
エリダヌス座の方向約3500万光年彼方の渦巻銀河「NGC 1291」の複雑さも、その一つだ。この銀河は、フランス人天文学者ドゥ・ヴォークルールによって、銀河の内側と外側に2つの棒状構造が存在することが初めて特定された銀河である。ロシアのマトリョーシカのような二重の棒状構造は、銀河の内部進化や、銀河中心の超大質量ブラックホールに物質がどのように供給されているのかを理解するための基本的な情報となる。
スペイン・カナリア天体物理研究所(IAC)のJairo Méndez Abreuさんたちの研究チームが、ヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡VLTに搭載されている分光器「MUSE」を使ってNGC 1291を観測したところ、内側の棒状構造の中にピーナツ型の構造が見つかった。
このような構造は、棒状構造内の星が垂直方向に運動することによって作られる。これまで、ピーナツ型構造は、天の川銀河のように棒状構造が1つしか存在しない銀河の棒状構造か、または二重棒状構造を持つ銀河の外側の棒状構造の中にしか見つかっていなかった。二重棒状構造の内側の棒状構造の中に発見されたのは、NGC 1291が初めてである。
「一部の銀河ではマトリョーシカのように、内側と外側に同じ構造を持っていることを示した点が重要な成果です」(Méndez Abreuさん)。今回の研究結果は、内側の棒状構造が外側と同じように進化することも示している。
「NGC 1291の内側の棒状構造に発見された、横から見るとピーナツ型、上から見るとXの字形をした構造の存在は、数千万年にわたってピーナツ型構造が安定して存続できる可能性を示唆しています」(IAC Adriana de Lorenzo-Cáceresさん)。
まだ観測では確認されていないものの、こうした構造が銀河中心にガスを送り込んで、超大質量ブラックホールへ物質を供給するという説がある。棒状構造が長期間安定して存続する可能性を示した今回の成果は、このアイディアを裏付けるものとなった。
〈参照〉
- IAC:Galaxies like Russian dolls
- MNRAS Letters:The MUSE TIMER view of the double-barred galaxy NGC 1291 論文
〈関連リンク〉
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