JWSTで初期宇宙に棒渦巻銀河を複数発見

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ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の観測で、宇宙年齢が現在の2~4割だった時代に棒渦巻銀河が6個発見された。銀河進化のモデルを見直す必要があるかもしれない。

【2023年1月13日 テキサス大学

米・テキサス大学オースティン校のYuchen Guoさんたちの研究チームは、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)が行った初期観測プログラムの一つ「宇宙進化初期リリース科学サーベイ(CEERS)」で得られた画像から、中心部に棒構造を持つ「棒渦巻銀河」を6個発見した。見つかったのは宇宙年齢が現在の20~40%だった時代だ。

今回発見された棒渦巻銀河の一つ「EGS-23205」は、うしかい座の方向約110億光年の距離(赤方偏移z=2.136)にある。その姿は、ハッブル宇宙望遠鏡(HST)の画像では塵に覆われた円盤の形がぼんやりと見える程度だった。しかし、昨年夏に撮影されたJWSTの画像では、明らかに棒構造を持つ美しい棒渦巻銀河としてとらえられている。

EGS-23205
棒渦巻銀河EGS-23205。(左)HSTによる近赤外線画像、(右)JWSTによる中間赤外線画像(提供:NASA/Guo, Jogee, Finkelstein and CEERS collaboration/University of Texas at Austin、以下同)

「これらのデータを一目見て、『他のデータは全て後回し!』と言いました。HSTではほとんど見えなかった棒構造がJWSTの画像では際立っており、銀河の基本構造を見る上でJWSTが驚異的な威力を持つことを示しています」(テキサス大学オースティン校 Shardha Jogeeさん)。

JWSTが遠くの銀河の構造をHSTよりもくっきりと撮影できるのは、HSTより主鏡が大きくて集光力・分解能が高いのと、HSTよりも長波長の赤外線で観測するので塵を見通すことができるためだ。

Guoさんたちは、同じく約110億年彼方(z=2.312)にある棒渦巻銀河「EGS-24268」も同定し、EGS-23205とEGS-24268はこれまでに発見された中で最も遠い棒渦巻銀河となった。残る4個も80億光年以上の距離にある。「今回の研究で私たちは、こうしたデータを過去に誰も使ったことも定量的に分析したこともない、全く新しい領域を目にしています。まるで、誰も入ったことのない森に分け入るようなものです」(Guoさん)。

6つの棒渦巻銀河
JWSTがとらえた6個の棒渦巻銀河。各左上のラベルは銀河の名称とその銀河が存在する時代(Gyr=10億年)で、約84億~110億年前の範囲に当たる

棒渦巻銀河では、棒構造によって銀河中心部にガスが送り込まれ、他の領域より10~100倍も速く星形成が進む。また、中心部に供給されたガスの一部は、銀河中心にある超大質量ブラックホールの成長にも使われる。

「今回、宇宙の初期に棒渦巻銀河が見つかったことで、『棒構造が初期の時代に星形成を加速する』という新たな経路が銀河進化モデルの中に見いだされたことになります」(Jogeeさん)。こうした初期の宇宙にすでに棒渦巻銀河が存在するという事実はまさに、現行の銀河の理論モデルに見直しを迫るものだ。初期宇宙での棒渦巻銀河の存在率を正しく導くように銀河の物理を修正する必要がある。研究チームでは、今後の論文で様々なモデルの検証を行う予定だという。