ボイジャー2号が太陽圏を脱出
【2018年12月12日 NASA JPL】
「ボイジャー1号」に続き、人類は史上2個目の人工物を太陽圏の外へと送り込んだ。
1977年8月に打ち上げられた「ボイジャー2号」は、16日後に地球を出発した「ボイジャー1号」と同じく、その設計寿命である5年のうちに木星と土星への接近探査を行った。その後の遠隔アップデートによりボイジャー2号はさらに高性能化され、天王星や海王星への接近通過も実施。4つの惑星探査を終えた2機の探査機は、寿命をはるかに超えて41年間も飛行を続けている。
NASA史上最長の稼働期間記録を持つ探査機となったボイジャー2号は現在、地球から180億km以上も離れたところを飛行しており、その送信データが地球に届くまでには約16.5時間もかかる。
今年11月5日、「ボイジャー2号」に搭載されているプラズマ観測装置が、機体周囲の太陽風粒子の急激な減速を観測し、以降太陽風が観測されなくなった。プラズマの観測データ以外に、宇宙線サブシステム、低エネルギー荷電粒子観測器、磁力計のデータも、ボイジャー2号が「太陽圏」の境界を越えたことを示していた。
太陽圏(ヘリオスフィア)とは、太陽風の粒子と太陽の磁場から形成されている大きな泡のような構造のことで、2012年に人類の探査史上初めてボイジャー1号が太陽圏の外へ飛び出したことが確認されている。
「この時の訪れを待ち望んできました。このような大きな節目を迎えられるほど、2つの探査機が長い間稼働し続けたことは、私たち全員に安堵と喜びをもたらしました。ヘリオポーズの外を飛行する2つの探査機からの情報を楽しみにしています」(ボイジャー・プロジェクトマネージャー Suzanne Doddさん)。
太陽圏と恒星間空間との境界は「ヘリオポーズ」と呼ばれ、高温の太陽風と、冷たく高密度の星間物質とが出会う場所だ。ボイジャー2号にはこのヘリオポーズの性質を観測できる装置が搭載されており、その領域に関する初のデータが今後得られるとみられている。
今後ボイジャー1号と2号が送ってくるデータは、NASAの星間境界観測機「IBEX」のデータとあわせて、恒星間風と太陽圏との相互作用を調べるうえで非常に役立つものとなるだろう。
「太陽系の物理を調べる探査機の中で、ボイジャーは非常に特別な位置にあります。私たちの研究は太陽から始まり、太陽風の届くあらゆるところにまで及びます。ボイジャーから太陽の影響が及ぶ領域の端に関する情報が送られてくれば、まったく未知の領域を垣間見ることになるでしょう」(NASA本部太陽系物理学部門部長 Nicola Foxさん)。
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