大きな粒子でできている天王星の細い環
【2019年7月4日 アルマ望遠鏡/アメリカ国立電波天文台/カリフォルニア大学バークレー校】
現在おひつじ座に位置し6等級の明るさになっている天王星は、双眼鏡で見えるほど明るく、太陽系惑星の中で木星、土星に次いで3番目の大きさを誇るにも関わらず、知られていないことが多い。
天王星の環が初めて発見されたのは1977年と比較的最近で、これまでに計13本の存在が確認されている。環は可視光線の反射率が極めて低く、木炭のように暗い。環の幅は土星の環と比べると非常に狭く、最も幅の広いε(イプシロン)環でも20kmから100kmほどしかない。NASAの「ボイジャー2号」が1986年に行った探査では「主な環に塵サイズの粒子がないらしい」ことがわかったぐらいで、温度など詳しい測定は行われなかった。
この天王星の環について、米・カリフォルニア大学バークレー校の研究チームがアルマ望遠鏡での電波観測を、英・レスター大学のチームが欧州南天天文台VLTでの赤外線観測を行った。その結果、天王星の環の温度が液体窒素の沸点と同じマイナス196℃であることが初めて測定された。また、最も明るく密度の高いε環が他の惑星の環とは異なる性質を持っており、ゴルフボールサイズかそれより大きい岩で構成されていることも明らかとなった。
土星の環の幅は数百kmから数万kmにも及んでおり、主成分が氷であるため明るく見える。また、土星の環を構成する粒子サイズは様々で、最も内側のD環にはマイクロメートルサイズの小さな粒子がある一方、他の環では数十mのものもあるとされている。他に環を持つ惑星では、木星の環は主にマイクロメートルサイズの小さな塵で、海王星の環も大部分が塵で構成されている。
「ε環は少し変わった存在であることがわかっています。小さな塵が見当たらないのです。何かが小さな塵を一掃しているのか、あるいは塵どうしがくっついてしまっているのか、まだわかっていません。今回の観測は、天王星のすべての環が同じ源から来たのか、それぞれの環で異なるのかなど、環の構成を理解するためのステップといえます」(カリフォルニア大学バークレー校 Edward Molterさん)。
天王星の環の起源には諸説あり、かつて重力によって捕らえられた小惑星、互いに衝突して粉々になった衛星の残骸、天王星に近づき過ぎたときにばらばらになった衛星の残骸、あるいは45億年前の惑星形成時から残った破片ではないかという考え方もある。今後の観測によって、天王星の環のより詳しい様子が明らかになることが期待される。
〈参照〉
- アルマ望遠鏡:冷たい輝きを放つ天王星の環
- NRAO:Planetary Rings of Uranus ‘Glow’ in Cold Light
- UC Berkeley:Astronomers see “warm” glow of Uranus’s rings
- The Astronomical Journal:Thermal Emission from the Uranian Ring System 論文
〈関連リンク〉
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