なぜ海王星は天王星より青いのか
【2022年6月7日 ジェミニ天文台】
海王星と天王星は、質量や大きさ、大気の組成はよく似ているが、外見は明らかに異なる。可視光線で見ると海王星は濃い青で、天王星は淡い青緑色だ。
英・オックスフォード大学のPatrick Irwinさんたちの研究チームが明らかにしたところによれば、その差は両惑星に存在する「もや」の層に由来するらしい。Irwinさんたちは天王星と海王星の大気を構成するエアロゾル(煙や霧のように大気中に微粒子が分散している状態)のモデルを考察する過程で、色の違いを説明できることに気づいた。「このモデルを開発すれば、巨大氷惑星の大気に含まれる雲やもやを理解しやすくなると期待してました。天王星と海王星の色の違いを説明できたことは、予想外のボーナスです!」(米・カリフォルニア大学バークレー校 Mike Wongさん)。
従来の研究では両惑星の上層大気に関する特定の波長にしか注目してこなかったが、研究チームはハッブル宇宙望遠鏡と米・ハワイのジェミニ北望遠鏡、およびNASA赤外線望遠鏡施設(IRTF)がとらえた紫外線、可視光線、近赤外線の観測データを分析してモデルを構築した。新しいモデルでは、これまでメタンと硫化水素の氷からなる雲しか存在しないと考えられていた層にも、もやの粒子が存在すると考えられている。
今回の大気モデルにはエアロゾルを含む層が3つ存在するが、色に影響を与えるのは、もやの粒子からなる真ん中の層だ。天王星と海王星の大気に含まれるメタンは赤い光を吸収しやすいため、もやがなければ両惑星とも深い青色に見えるはずだが、もやが多いと青以外の光も反射されやすくなり、結果としてより淡い色になる。
このように惑星を白くするもやだが、研究チームのモデルによれば絶えずもやを除去する作用が働いている。もやの層の最下部はちょうどメタンが凍って雪になる環境で、このときにもやも雪にと一緒に下層へ引きずり下ろされてしまうからだ。下層の方が暖かいため、メタンは再び蒸発して戻ってくるが、海王星の方が大気の動きが活発なので、メタンがかき混ぜられて上へ戻されやすい。よって、もやも除去されやすく、中間のエアロゾル層が薄くなり、結果として天王星と比べて青色が強く見えるというわけだ。
このモデルは、海王星で頻繁に見られ、天王星でもごくまれに観測される暗斑についても説明できるかもしれない。これまでは大気のどの層が暗斑に関わっているかは不明だったが、Irwinさんたちは一番下のエアロゾルの層が暗くなることで海王星や天王星の暗斑が形成される可能性を指摘している。
〈参照〉
- Gemini Observatory:Gemini North Telescope Helps Explain Why Uranus and Neptune Are Different Colors
- Journal of Geophysical Research: Planets:Hazy blue worlds: A holistic aerosol model for Uranus and Neptune, including Dark Spots 論文
〈関連リンク〉
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