宇宙を漂うクラゲの触手のような「銀河の尾」

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アルマ望遠鏡などよる観測で、渦巻銀河から流れ出す「銀河の尾」がとらえられた。

【2019年10月18日 アルマ望遠鏡

アルマ望遠鏡とヨーロッパ宇宙機関の超大型望遠鏡VLT、ハッブル宇宙望遠鏡が観測したデータから作成された、渦巻銀河「ESO 137-001」の画像が公開された。この銀河は、みなみのさんかく座の方向約2.2億光年の距離にあり、じょうぎ座銀河団に属している。

渦巻銀河「ESO 137-001」
渦巻銀河「ESO 137-001」。銀河とその周辺がハッブル宇宙望遠鏡、明るい紫色で示された水素の流れがVLTの分光器「MUSE」、オレンジ色で示された銀河内から流出する一酸化炭素がアルマ望遠鏡によって、それぞれ撮像された(提供:ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), P. Jáchym(Czech Academy of Sciences) et al.)

画像には宇宙を漂うクラゲの触手のような、銀河から外に向かって流れ出す「銀河の尾」がはっきりと写し出されている。このような銀河の尾は、「ラム圧」と呼ばれる圧力によって銀河に含まれるガスがはぎ取られることで作られる。

多数の銀河が集まっている銀河団において、銀河同士の間は空っぽではなく、高温ガスで満たされている。この高温ガスで満ちた空間の中を銀河が動いていくと、圧力を受けて銀河内からガスがはぎ取られ、画像のような美しく複雑な尾が形成されるのである。銀河は通常、銀河団の中心に向かって落下していくが、このような銀河の尾があると、銀河が動いていく道筋がはっきりわかる。

今回の画像は銀河の尾に潜む低温分子ガスの分布を初めて高解像度で示したものだ。ESO 137-001は、ラム圧で作られた尾を持つ銀河の中では地球に最も近いものの一つであり、爆発的な星形成が起こる「火の玉」と呼ばれる領域を長く伸びるガスの尾の中に含んでいるという点でも特に興味深い天体である。尾の中で星が形成されるメカニズムは正確にはわかっておらず、今回のような低温分子ガスの分布図は、激しく変化する環境で星形成が起こる条件を知るための手がかりを与えてくれるものとなる。