ガンマ線バーストの残光から超高エネルギーガンマ線を検出
宇宙最大の爆発現象であるガンマ線バーストでは、太陽が数十億年もかけて放射する以上の莫大なエネルギーがわずか数秒から数分程度の間に放出される。バーストの瞬間には、可視光線の数千倍から数百万倍のエネルギーを持つガンマ線が主に放射され、その後には急激に暗くなり弱く光る残光が可視光線やX線で観測される。
2018年7月20日、NASAの天文衛星「フェルミ」と「ニール・ゲーレルス・スウィフト」によって、うお座の方向約60億光年の距離で発生したガンマ線バースト「GRB 180720B」が検出された。これら衛星からの情報を受け、世界中の望遠鏡がこのガンマ線バーストに向けられ、追観測が行われた。
アフリカ南西部ナミビアに設置されたヘス望遠鏡も、ガンマ線バーストの発生から10時間後に残光の観測を開始した。ヘス望遠鏡は5台の望遠鏡で構成されており、超高エネルギーガンマ線と大気中の分子とが反応することで生じる「チェレンコフ光」をとらえることによって、間接的に超高エネルギーガンマ線を観測することができる。
ヘス望遠鏡による観測の結果、ガンマ線バーストの残光の中に、100ギガ電子ボルトから440ギガ電子ボルト(可視光線のエネルギーの数千億倍程度)に対応する超高エネルギーガンマ線が検出された。同望遠鏡の運用開始から10年以上を経て初めてのことだ。
これまで、超高エネルギーガンマ線は爆発直後の数十秒間のみ観測可能と考えられてきたが、バースト発生から10時間以上経過した後の残光からの検出成功は快挙といえる。これほど長時間にわたって超高エネルギー粒子の生成が続いていることを示した驚くべき発見だ。
GRB 180720Bの発生のメカニズムとしては、大質量星の中心核が重力崩壊を起こしてブラックホールが形成され、その周辺に残ったガスが中心のブラックホールへと落ち込むことで周囲に円盤ができ、同時に円盤の垂直方向にほぼ光速の速さで噴出するプラズマ流「相対論的ジェット」が生じて、そこからガンマ線の閃光が放たれた、と解釈されている。
今回の結果により、ガンマ線バーストが光るメカニズムの理論モデルを絞り込むことができた。一方で、じゅうぶんな時間が経過した後でも超高エネルギーガンマ線を放射する現象を説明することは単純ではなく、今後の研究が望まれる。ガンマ線バーストからの超高エネルギーガンマ線放射の検出例が増えることにより、宇宙初期のブラックホール生成の様子や宇宙の進化の解明に役立つことが期待される。
〈参照〉
- カブリIPMU:世界初!! ガンマ線バースト残光から超高エネルギーガンマ線の検出に成功
- Nature:A new very-high-energy component deep in the Gamma-ray Burst afterglow 論文
〈関連リンク〉
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