金星の火山は今も活動中
【2020年7月29日 メリーランド大学】
金星の表面には円環状に盛り上がった「コロナ」と呼ばれる地形が存在する。これはハワイ諸島を形成した火山のように、金星のマントルで対流により上昇した物質(プルーム)が地殻を突き抜けて噴出したものだと考えられているが、プルームがコロナを形成するプロセスの詳細や、コロナに様々な違いが見られる理由はわかっていない。
同じ岩石惑星である火星や水星と比べると、金星は表面の年代が比較的若いことが知られている。とはいえ、現在では金星は冷え切っていて内部の地質活動は衰え、地殻も固く固結しているため、仮に内部に熱い物質があったとしても、表面に噴き出すような火山活動はもう起こらないと考えられてきた。
米・メリーランド大学カレッジパーク校のLaurent Montésiさんたちの研究チームは、金星の地下における熱や力の作用をモデル化した精細な3次元シミュレーションを行い、コロナの形成プロセスを詳しく説明することに成功した。
さらに、コロナが最近活動した場合に見られる特徴も区別できるようになった。この特徴を探した結果、活動の形跡を示すコロナが少なくとも37個見つかった。
「初めて、特定の構造を指して『これは太古の火山ではなく今も活動中です。現在は休眠中かもしれないが決して活動を完全に終えたわけではありません』と言えるようになりました。ほぼ不活発な惑星だという金星のイメージを、内部が沸いていていくつもの火山に溶岩を供給できる惑星へと大きく変える研究成果です」(Montésiさん)。
活動中のコロナの多くは一定の場所に集まっている。こうした場所は金星上で特に活発な領域という可能性があり、惑星内部の動きに関するヒントを与えてくれるかもしれない。将来の金星探査計画における地質学的探査のターゲットを選ぶ際の指針となることが期待されている。
〈参照〉
- University of Maryland - College of Computer, Mathematical & Natural Sciences:Scientists Discover Volcanoes on Venus Are Still Active - New 3D model provides evidence that Venus is churning inside
- Nature Geoscience:Corona structures driven by plume–lithosphere interactions and evidence for ongoing plume activity on Venus 論文
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