中性子星とブラックホールの合体に伴う重力波を初観測
【2021年7月5日 KAGRA 大型低温重力波望遠鏡/LIGO Scientific Collaboration/ノースウェスタン大学/Virgo】
2015年9月に重力波検出器が初めてとらえた宇宙からの信号は、ブラックホール同士の合体に伴う重力波だった。また、2017年8月には中性子同士の合体に伴う重力波が観測された。それ以来、こうした超高密度天体同士の合体で放出された重力波は続々ととらえられている。大半がブラックホール同士の合体による重力波で、中性子星同士の合体による重力波も数件見つかっているが、ブラックホールと中性子星が合体したと判断できるイベントはこれまでなかった。
そんな前例のないイベントが、わずか10日の間に2度とらえられた。最初は2020年1月5日に、米国にある双子の重力波検出器「Advanced LIGO」の一方とイタリアにある「Advanced Virgo」が観測したもので、この重力波イベント「GW200105」は太陽質量の8.9倍の天体と1.9倍の天体の合体によるものだと計算された。次いで2020年1月15日に両方の「Advanced LIGO」と「Advanced Virgo」を合わせた3基で「GW200115」が観測され、合体した天体は太陽質量の5.7倍および1.5倍と算出されている。
どちらの現象も、重い方の天体(太陽質量の8.9倍と5.7倍)は観測と理論の両面からブラックホールと判断できる。また、軽い方の天体(太陽質量の1.9倍と1.5倍)は既知のどのブラックホールよりはるかに軽く、中性子星と考えるのが整合的だった。2つの天体が合体したということは、両者は直前まで、近接した連星系だったことを意味する。ブラックホールと中性子星の連星が存在することは数十年前から予測されていたが、今回の観測で初めて説得力のある証拠が得られた。
重力波からは、ブラックホールと中性子星の連星が形成された経緯までも読み取ることができた。
ブラックホールも中性子星も大質量の恒星が寿命を迎え超新星爆発を起こした後に残される天体だが、合体前の2つの天体は恒星だったときからお互いの周りを回っていた可能性がある。その場合、ブラックホールの自転方向がその周りを回る中性子星の公転方向と一致する傾向がある。GW200105では判別ができなかったが、GW200115では2つの回転が反対向きである可能性が高く、そうであれば元々恒星だった2つの天体は別々に生まれ、離れた所で超新星爆発を起こしてから出会ったというシナリオが考えられる。これは、GW200115の発生源が球状星団のように星の密度が高い環境で生まれたことを示唆するものだ。
今回観測された2つの重力波イベントから見積もったところによると、私たちから10億光年の範囲で起こるブラックホールと中性子星の合体は年間5~15回だという。この数字は、元から連星だったペアによる合体でも超新星後に出会ってからの合体でも説明できるので、この発生率だけで連星の形成シナリオを特定することはできない。
〈参照〉
- KAGRA 大型低温重力波望遠鏡:LIGOとVirgoが中性子星とブラックホールの連星からの重力波を観測
- LIGO Scientific Collaboration:A NEW SOURCE OF GRAVITATIONAL WAVES: NEUTRON STAR - BLACK HOLE BINARIES
- Northwestern University:Astrophysicists detect first black hole-neutron star mergers
- Virgo:First observations of ‘mixed’ black hole and neutron star pairs
- The Astrophysical Journal Letters:Observation of Gravitational Waves from Two Neutron Star - Black Hole Coalescences 論文
〈関連リンク〉
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