星座八十八夜 #50 星座界の超有名人「オリオン座」
【2023年12月22日 アストロアーツ】
(「スマホで楽しむ星空入門」より抜粋)
見どころ
〈オリオン座〉の目印は、3つの2等星が並んだ「三ツ星」です。秋の深夜から春の宵空まで、この「三ツ星」とそれを囲む4つの1~2等星は、すぐに見つけだすことができます。
「三ツ星」の下にも、よく見ると縦に3つの星が並んでいるのがわかります。これは「小三ツ星」と呼ばれていて、真ん中の星のところには、空の暗いところでなら「M42オリオン大星雲」があるのが肉眼でもわかります。双眼鏡で見ると「三ツ星」と「小三ツ星」の両方がちょうど視野におさまります。
三ツ星を囲む4つの星は、まず左上の赤い星に注目してみましょう。この星の名前はベテルギウスです。地球から約500光年のところにある赤色巨星で、もうすぐ寿命が尽きようとしている星です。右下の青白い星はリゲルで、「足」という意昧です。ベテルギウスとリゲルの色は、表面の温度の違いによるものです。
ベテルギウスと〈おおいぬ座〉のシリウス、〈こいぬ座〉のプロキオンで作る三角を「冬の大三角」といいます。
星座の起源
古代メソポタミアではこの星座は「天の羊飼い」と呼ばれ、神の姿とされました。これがギリシアの〈オリオン座〉の起源となった可能性があります。紀元前8世紀ごろに成立した古代ギリシアで一番古い叙事詩であるホメーロスの「オデュッセイア」や「イーリアス」には、早くもオリオン座が登場しています。
エジプトでは三ツ星が大事な星座とされていて、冥界の神オシリスと見なすこともありました。アラビアでは〈オリオン座〉そのもの、または〈オリオン座〉を中心とした星の集まりを「ジャウザー」と呼んでいました。「ジャウザーの手」を意味するアラビア語が変形して、赤い1等星の名前であるベテルギウスになったと考えられます。
日本では、赤いベテルギウスと青白いリゲルを、それぞれの色で平家の赤旗、源氏の白旗にたとえた「平家星、源氏星」という和名が伝わっています。〈オリオン座〉全体を呼んだ名前には、「鼓星」「くびれ星」「杵星」「袖星」などがあります。
星座の物語
ギリシア神話によると、オリオンは海の神ポセイドンとクレタ島の姫エウリュアレの間に生まれた息子で、たいへん身体が大きく、力が強く、気の荒い狩人だったということになっています。その荒々しさが災いして、恋心を寄せたプレアデスの7人姉妹にさんざん嫌われてしまいました。
しかし、月と狩りの女神アルテミスは、なぜか野生的なオリオンが好きになり、しばらくの間、オリオンは幸せな日々をすごすことができました。ところが、オリオンを快く思わない、太陽神アポロン(アルテミスの弟)の陰謀によって、アルテミスの放った矢で殺されてしまったのです。悲しんだアルテミスは、オリオンを天に上げ、月の通り道に置きました。アルテミスは月を乗せた銀の馬車で、1か月に1度オリオンのそばを通りかかります。そのとき2人は再会して、なつかしいひと時を過ごすのだといわれています。
別の神話では、「この世に自分に敵うものは何もない」と自分の強さを自慢していたオリオンのことが気に障ってたまらなかった女神ヘラが、毒サソリを送ってオリオンを殺させました。だからオリオンとサソリは仲が悪く、星座になった今でも冬と夏の空に分かれて、決して同じ空で一緒にはならないのです。
88星座の見所を紹介!「スマホで楽しむ星座入門」
「スマホで楽しむ星座入門」では、いつどのように見えるの?星座誕生の由来は?などを星座一つ一つについて紹介。星空観察の入門にピッタリな一冊です。神話のエピソードや星座どうしの意外なつながりなども見えてきますよ。デジタルアーティストKAGAYAの美しいイラストが誌面を彩ります。
「スマホで楽しむ星空入門」では、星図アプリ「星空ナビ」とも連動。二次元コードをスマートフォンで読みとると、夜空の中で星座が見える方向を教えてくれる「ガイド機能」が使えます。見つけにくい星座も「星空ナビ」を使って、実際の夜空で探してみましょう!
関連商品
〈関連リンク〉
関連記事
- 2024/12/17 【12月17日発売】ムック「星のギリシア神話研究」
- 2024/07/24 季節の星や星座を楽しめるプラネタリウム番組を無料で公開
- 2024/05/21 星座八十八夜 #88 南天で人気ナンバーワン「みなみじゅうじ座」
- 2024/05/17 星座八十八夜 #87 ケンタウルスにおそわれる「おおかみ座」
- 2024/05/14 星座八十八夜 #86 モノサシを組み合わせた形「じょうぎ座」
- 2024/05/10 星座八十八夜 #85 太陽にもっとも近い恒星がある「ケンタウルス座」
- 2024/05/07 星座八十八夜 #84 彫刻を作る道具「ちょうこくぐ座」
- 2024/04/30 星座八十八夜 #83 きらりと輝く散開星団が目印「かみのけ座」
- 2024/04/26 星座八十八夜 #82 授業で使った文房具「コンパス座」
- 2024/04/23 星座八十八夜 #81 大熊を追いかけている2匹の猟犬「りょうけん座」
- 2024/04/19 星座八十八夜 #80 ウソつきの罰を受けた白いカラス「からす座」
- 2024/04/16 星座八十八夜 #79 オリンポスの乾杯のさかずき「コップ座」
- 2024/04/12 星座八十八夜 #78 ラカイユの科学実験シリーズ「ポンプ座」
- 2024/04/09 星座八十八夜 #77 星座になった天体観測機器「ろくぶんぎ座」
- 2024/04/05 星座八十八夜 #76 北極星はこぐまのシッポ「こぐま座」
- 2024/04/02 星座八十八夜 #75 北斗七星はおおぐま座のシッポ「おおぐま座」
- 2024/03/29 星座八十八夜 #74 ライオンによりそう小ライオン「こじし座」
- 2024/03/26 星座八十八夜 #73 もっとも長~い星座「うみへび座」
- 2024/03/22 星座八十八夜 #72 目立たず運の悪い、わき役の星座「かに座」
- 2024/03/19 星座八十八夜 #71 空飛ぶ魚が星空に飛び出した「とびうお座」