商業デブリ除去実証衛星「ADRAS-J」打ち上げ
【2024年2月26日 アストロスケール】
日本時間2月18日(日)23時52分、株式会社アストロスケールの商業デブリ除去実証衛星「ADRAS-J」(Active Debris Removal by Astroscale-Japan)を搭載した米・ロケット・ラボ社のロケット「Electron」が、ニュージーランド・マヒア半島の発射施設から打ち上げられた。
ロケットは計画通り飛行し、高度約600kmでADRAS-Jを分離した。その後、ADRAS-Jと地上局との間で正常な通信が確立され、打ち上げは成功した。
1957年に世界初の人工衛星が打ち上げられて以降、人工衛星の軌道付近にはロケットの残骸や小さなパーツなどが増え続けている。このような「スペースデブリ」と呼ばれる宇宙ごみは、他の人工衛星や国際宇宙ステーションでの有人活動に対する大きな脅威だ。JAXAでは深刻化するスペースデブリ問題の改善を目的として、日本由来の大型デブリの除去を民間企業と協力して実施するプログラム「商業デブリ除去実証(CRD2)」に取り組んでいる。
CRD2は、デブリへの接近・撮影の技術実証を行う「フェーズ I」と、実際にデブリを捕獲して大気圏に再突入させる「フェーズ II」で構成される。ADRAS-Jは、そのフェーズ Iを行う技術実証衛星として選定・開発されたもので、デブリに安全に接近して調査を行う世界初の技術の実証を行う。
対象となるデブリは、2009年に打ち上げられたJAXAのH-IIAロケット15号機の上段(全長約11m、直径約4m、重量約3t)だ。この物体からは位置情報などは発信されていないため、ADRAS-Jは地上からの観測データや、ナビゲーションセンサーやランデブー機能といったADRAS-Jが持つ高度な技術を駆使してデブリに接近し、デブリの運動や損傷・劣化といった状態がわかる映像を取得する。その作業は、高速で移動する乗り物に乗りながら、特定の物体を望遠鏡や双眼鏡や虫眼鏡に切り替えて観察するようなものだという。
ADRAS-Jは、デブリの定点観測と周回観測の後、最終接近実験を実施し、デブリから離脱して安全な軌道に移動しミッションを終了する。ADRAS-Jによる技術実証が成功すれば、実際にデブリを捕獲して大気圏に再突入させる「フェーズ II」実施の足がかりとなる。
「衛星打ち上げという大きなマイルストーンの一つを達成することができました。本ミッションで実証する技術は、デブリ除去を含む軌道上サービスの中核となるものです。本物のデブリを対象としてこれを実証することは、当社だけでなく、世界の宇宙産業界にとっても大きな一歩と言えるでしょう。まさに、宇宙のロードサービス時代の幕開けです。ご支援いただいた皆様にお礼と感謝を申し上げるとともに、本ミッションの実現に取り組んできたアストロスケールのチームを誇りに思います」(アストロスケール 加藤英毅さん)。
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