地上燃焼の理論でIa型超新星の爆発モデルの検証に成功

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地上の燃焼実験から裏付けられた理論を使って、Ia型超新星が起こす核融合燃焼の火炎の発生・消失を判定できることがわかった。地上実験の知見を宇宙物理の重要な問題に適用した画期的な成果だ。

【2024年9月26日 京都大学

Ia型超新星は、高密度天体の白色矮星とある種の伴星との連星系において、白色矮星が熱核反応の暴走を起こすことによって生じる爆発現象だ。その明るさや元素の生成量は、天体内部の核融合である「核燃焼」によって駆動される「デトネーション」が発生すると考えるとよく説明できる。

Ia型超新星のイラスト
Ia型超新星のイラスト。恒星(左)から白色矮星(右)に物質が降り積もり、臨界を超えると爆発を起こす(提供:ESA/ATG medialab/C. Carreau

デトネーションとは可燃性混合気体中で爆発現象を引き起こすような超音速で伝播する燃焼波のことで、地上のデトネーションについては、防災の観点から実験室による研究が進んでおり、豊富な基礎実験データに裏付けされた理論が多くある。

しかし、これらの理論をIa型超新星に応用した研究例はこれまでなく、Ia型超新星においてデトネーションがそもそも点火するのか、点火しても消失せず維持されるのかといった、Ia型超新星のメカニズムを結論づける根本的な問題は手つかずとなっていた。

京都大学の岩田和也さんたちの研究チームはデトネーションに伴う「セル構造」に着目し、京都大学基礎物理学研究所のスーパーコンピューター「Yukawa-21」や、国立天文台のスーパーコンピューター「XC50」を用いて、白色矮星表面のローカルな領域に注目した高解像度のシミュレーションを行った。

岩田さんたちは白色矮星表面の密度や組成の異なる多数のシミュレーションを行い、Ia型超新星で想定される状況下においてもセル構造が見られることを確認した。続いて、それらの性質からセル構造のサイズを決定する数式を考案し、セル構造サイズに基づいた地上デトネーションの理論をIa型超新星へ応用する準備を整えた。

こうした準備を経て理論を過去に行われてきた大領域シミュレーションに当てはめたところ、デトネーションが着火した例とそうでない例について、その傾向を地上デトネーション理論でうまく説明できることが示された。また、先行研究でばらつきのあった点火・消失条件に対し、理論的な基準を上手く提案することができることも示された。

Ia型超新星の第一段階のデトネーションのイメージ
白色矮星表面への質量降着流により発生する、Ia型超新星の第一段階のデトネーションのイメージ。右のセル構造の拡大図は研究チームによる数値シミュレーション結果(提供:京都大学 岩田和也、前田啓一)

今回の研究は、必ずしも大規模なシミュレーションを行わなくても、地上の燃焼実験から強い裏付けのある知見を宇宙物理学における重要な未解決問題に適用できることを示した画期的な成果となった。

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