国際天文学連合、米大統領令を深く憂慮
【2017年2月1日 IAU】
「7か国からの入国を禁止する米国大統領令」に対する、国際天文学連合の対応
(訳:アストロアーツ)
国際天文学連合(以下IAU)は、このたびの米国大統領令および他国の反応について深く憂慮する。発令の影響は、天文学における国際協力や科学者の移動にも及ぶものと思われる。
IAUの使命は、国際協力を通じ、あらゆる面において天文学という科学分野を保護・促進することにある。IAU加盟国は現在79か国、さらに19か国からのメンバーが含まれている。連合内には、2841人の天文学者が所属しているが、うち米国科学者の占める率が最も高い。そして、47人が今回の大統領令で制限された7か国(イラン、イラク、リビア、ソマリア、スーダン、シリア、イエメン)から、さらに数百人がイスラム教徒が大半を占める国々からの天文学者である。
IAUは、いかなる国が定める移動性に関わる規制(今回米国で発令された大統領令に類似するものを含め)も、国際科学会議(ICSU)の“科学研究における自由”という原則に影響を受けた当連合の使命に反するものと考える。
そのような規制は、禁止された国々の天文学コミュニティー、同時に天文学全般に直接的な影響を及ぼす。
2015年にIAUは米・ハワイ州ホノルルにて総会を開催し、3000人以上の天文学者が74か国から参加した。参加者の中には、今回の大統領令で入国禁止となった7か国のうちの一部が含まれていた。その総会の経済効果は、約1000万~2000万ドルと計算されている。
IAUは、米国政府高官に対し、米国をはじめとする全世界および科学そのものが享受すべき利益のため、科学者の移動の絶対的必要性を考慮に入れた、新たなふるい分けの基準の打ち出しを強く迫るものである。
またIAUは、民族性や宗教、言語、国籍、政治的あるいはその他の思想といった要素に基づくいかなる差別にも断固として反対する。
IAUは、一国によるそのような行動が地球上の他の国々へと連鎖反応を起こさないことを望む。さもなければ、天文学という科学が深刻な打撃を受けるだろう。すべての人々に、協力そして寛容性と平和を重んじることを奨励する。
「IAUは、既存・新規に関わらず、世界市民の自由な往来の制限が、たとえ保安上必要だとしても、巨視的視点から、天文学者の移動性と人権を考慮に入れるべきと考えます。わたしたちは、米国をはじめ世界中の国々で科学ミーティングを主催し続けます。科学の進歩は、人類すべてのためであり、交流ミーティングには、すべての国の科学者が参加しなければなりません」(IAU事務局長 Piero Benvenutiさん)。
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