初めて見る、現在の星の大多数が生まれた現場

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二つの電波望遠鏡が約100億光年彼方の銀河を観測し、星形成が非常に盛んだった時期の星形成現場である銀河の姿を初めて精細にとらえた。

【2017年2月20日 カブリIPMUALMANRAO

約100億年前の時代は宇宙の歴史の中において星形成が非常に盛んだった時期で、現在の宇宙に存在するほとんどの星はこの頃に生まれたと考えられている。しかし、そのころの銀河は星形成が活発なため塵が多く存在しており、可視光線で星形成の現場を詳しく観測することは困難だ。塵を見通した観測には電波望遠鏡が適している。

カブリIPMUのWiphu Rujopakamさんたちの研究チームは、米・ニューメキシコ州のカール・ジャンスキー超大型干渉電波望遠鏡(VLA)と南米チリのアルマ望遠鏡を用いて、この時代の銀河を電波観測した。観測対象としては、2003年から2004年にかけてハッブル宇宙望遠鏡(HST)が撮影した天空の一領域「ハッブル・ウルトラディープフィールド」に含まれる、約100億光年彼方の銀河11個が選ばれた。

星形成銀河
VLA(電波)とHST(可視光線)の観測データを合成した、ハッブル・ウルトラディープフィールド内にある約100億光年彼方の星形成銀河(提供:K. Trisupatsilp, NRAO/AUI/NSF, NASA)

観測から、アルマ望遠鏡では星形成に必要な冷たいガスの分布が明らかにされ、VLAでは星形成が起こっている場所がとらえられた。どの銀河でも星形成が広い領域で活発に行われており、その活発さは現在の普通の銀河の20倍にもなる。現在の宇宙では銀河の合体が起こっている場所など限られた領域で星形成が盛んであることとは異なる状況だ。

今後より多くの銀河の星形成現場を精細に観測することで、当時の銀河における星形成のメカニズムや、現在の銀河との違いに迫り、銀河進化の歴史の解明が進んでいくことが期待される。