10億歳の宇宙に、大質量スターバースト銀河のペアが存在

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宇宙がほんの10億歳だったころの初期宇宙に、珍しい大質量のスターバースト銀河が発見された。追加観測の結果、単独と思われた天体の正体は、合体する運命にある2つの巨大な銀河であることが明らかになった。

【2017年11月20日 ヨーロッパ宇宙機関NRAO

初期宇宙に存在する原始的な銀河は現在の宇宙に見られる銀河とは異なり、天の川銀河よりもはるかに小さい。そこから数十億年かけて星形成や銀河同士の衝突合体を経て、徐々に大きな銀河へと成長していくと考えられている。しかし、ごく一部ではあるが、初期宇宙にも巨大な銀河が存在している。

米・コーネル大学のDominik Riechersさんたちの研究チームは、ヨーロッパ南天天文台の電波望遠鏡「APEX(Atacama Pathfinder EXperiment)」を使って、かじき座の方向に存在する銀河をサブミリ波の波長で観測し、赤さが際立っていること、長い波長で観測するほど明るく見えることを明らかにした。

もともとこの天体はヨーロッパ宇宙機関の赤外線天文衛星「ハーシェル」の観測により発見されたものだ。銀河中の星を生み出す雲の中の塵から赤外線が放射されることや、宇宙膨張によって遠方銀河の光の波長が引き伸ばされることが理由で、こうした銀河は赤外線からサブミリ波の波長で明るく輝いて見える。つまりAPEXの観測結果は、この銀河中で星形成が進んでいること、地球からかなり離れた天体であることを示唆している。

Riechersさんたちがアルマ望遠鏡でも追加観測を行ったところ、一酸化炭素と水蒸気が見つかり、銀河までの距離が127億光年と計算された。宇宙の誕生からわずか10億年後に、すでにこの大質量銀河が存在していたということになる。

アルマ望遠鏡による高解像度観測は、さらに驚きの結果をもたらした。「より詳しく調べた結果、この天体は実は2つの銀河であり、互いに合体する運命にあることがわかったのです」(Riechersさん)。銀河間の距離は約3万光年で、銀河同士は互いに秒速数百kmで接近している。

相互作用銀河「ADFS-27」
相互作用銀河「ADFS-27」。(中央の四角内)ハーシェルとAPEXによる観測データを合成した天体像、(右側の四角内)アルマ望遠鏡による高解像度観測による画像(提供:NRAO/AUI/NSF, B. Saxton; ESA/Herschel; ESO/APEX; ALMA (ESO/NAOJ/NRAO); D. Riechers et al. 2017)

「馬(Horse)」と「竜(Dragon)」という愛称が付けられた相互作用銀河「ADFS-27」の質量はどちらも天の川銀河ほどで、これは同時代に存在する銀河の10倍から100倍も大きい。銀河内に存在する星形成ガスの量は天の川銀河の約50倍もあり、天の川銀河の約1000倍も速い猛烈なペースで星形成が進んでいる。両銀河は数億年のうちには合体し、1つの大きな楕円銀河となるかもしれないと推測されている。珍しい存在ではあるものの確かにこの種の銀河が初期宇宙にあり、さらに数十億年後の宇宙に見られる、より大質量の銀河の元になることを示す観測結果である。

「高光度のスターバースト(爆発的星形成)銀河1つだけでも異例の発見ですから、2つの近接した高光度スターバースト銀河の発見は、本当にびっくりです」(Riechersさん)。

Riechersさんたちはアルマ望遠鏡やヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡VLTを使って星の種族や塵を観測し、2つの銀河を詳しく調べている。理論的には2つの銀河の周囲に小さな衛星銀河が存在すると考えられており、その探索も行われている。2019年に打ち上げ予定のジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡も、謎の解明に大きく貢献するだろう。