クエーサー風と激しい星形成の関連性
【2017年12月13日 ヨーロッパ宇宙機関】
1960年代に初めて発見されたクエーサーと呼ばれる天体の正体は、超大質量ブラックホールが潜む遠方銀河の中心核だ。ブラックホールに向かって落ち込むガスが非常に高温となり、電波からX線に至るすべての電磁波長域でエネルギーが放射されることで、天の川銀河の1万倍もの明るさで光って見えている。
非常に遠く離れたクエーサーの光が地球へ届くまでに通ってくる経路などを調べるには、クエーサーのスペクトル中に見られる吸収線という特徴が重要な役割を果たす。吸収線を調べることで、光がどんな物質を通過してきたのかに関するヒントが得られるからだ。
これまでの研究で、クエーサーと地球との間に存在する銀河やガス雲などの組成が突き止められてきたが、一部の吸収線については説明がつかず謎となっていた。その後、多くのクエーサーで観測されていたこの吸収線は炭素やマグネシウム、ケイ素といった元素を含む冷たいガスによって生じるものであり、クエーサーが存在する銀河内を秒速数千kmもの速度で移動する冷たいガスの風の中を光が通ってきたことを示す特徴であることがわかった。風の存在そのものは新しい情報ではないものの、これほどの高速に達するメカニズムはわかっていなかった。
オランダ・フローニンゲン大学カプタイン天文学研究所のPeter Barthelさんたちの研究チームは、赤外線天文衛星「ハーシェル」の観測データを使って冷たいガスの風の起源を突き止め、風と関係のある吸収線の強さが、クエーサーが存在する銀河の星形成率に直接関係していることを初めて明らかにした。
「大量の星形成と強力なクエーサー風が密接に関係しているという傾向を特定したことはエキサイティングな発見です。クエーサー風が超新星爆発で作られるというのは自然な説明であり、超新星爆発は激しい星形成期には頻繁に起こるのです」(カプタイン研究所 Pece Podigachoskiさん)。
今回の研究で明らかになった関連性は、銀河の大きさに関する謎の答えも提供してくれるかもしれないという。理論上、銀河は現在観測されている100倍もの大質量銀河にまで成長できると予測されているが、そのような銀河は観測されていないという謎だ。銀河の質量が最大に到達する前に、銀河内のガスの量を激減させるプロセスが働いていることを示している。
ガスの激減を引き起こすのは、爆発的星形成に関係する超新星爆発の風と、クエーサーの中心に位置する超大質量ブラックホールに関係する風という2つの要因が考えられている。どちらも影響を与えているとみられるが、冷たいガスの風と星形成率との関係を示した今回の研究結果から考えると、クエーサーの場合には、冷たいガスの安定的な供給が必要とされる星形成のほうがガスの激減に対しては大きな影響を及ぼしていると考えられる。
〈参照〉
- ヨーロッパ宇宙機関:Herschel data links mysterious quasar winds to furious starbursts
- The Astrophysical Journal Letters:Starburst-driven Superwinds in Quasar Host Galaxies 論文
〈関連リンク〉
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