「暗い太陽のパラドックス」に迫る新しいモデル

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太陽の光が弱かったはずの数十億年前にも地球が凍結していなかったという「暗い太陽のパラドックス」の謎に迫るシミュレーション研究が行われ、温室効果を生み出すじゅうぶんな量のメタンが地球や地球に似た系外惑星で生成される確率が明らかになった。

【2017年12月18日 Georgia Tech

標準的な太陽モデルによると、20億年前の太陽の明るさは現在の75%程度しかなく、年齢とともに明るくなっていると考えられている。もしこの理論が正しければ、当時の地球は全球凍結状態だったことになるが、実際には液体の水が存在していたことを示す強い証拠が発見されている。アメリカの天文学者カール・セーガンたちはこれを「暗い太陽のパラドックス」と呼び、当時の地球大気はアンモニアによる温室効果を生み出していたと考えた。

米・ジョージア工科大学の尾崎和海さんたちの研究チームは「暗い太陽のパラドックス」の解決を目指し、多くの微生物代謝プロセスを火山性、海洋性および大気活動と組み合わせ、この種のものとしてはこれまでで最も包括的と思われる新しいモデルを構築した。「わたしたちの仮説では、メタンが主な役割を果たしています。酸素とメタンは大気中に入り込むと、化学反応の複雑な連鎖の中で時間の経過と共にお互いに打ち消し合いますが、当時の大気には酸素がほとんどなかったために、メタンが今日よりもはるかに高い濃度に達することができたと思われます」(ジョージア工科大学 Chris Reinhardさん)。

モデルの中核となっているのは2つのタイプの光合成だ。一つは海中の鉄をさびに変え、もう一つは水素を光合成してホルムアルデヒドに変えるものである。ある細菌はホルムアルデヒドを発酵させ、他の細菌は発酵生成物をメタンに変えていた。現在の地球で最も有力なタイプである酸素を放出する光合成は30億年前には存在しておらず、それとは異なる非常に原始的な細菌による2種類の光合成プロセスが古代の地球の生物圏に不可欠だったようだ。

尾崎さんは様々なパラメーターを変更し、300万回以上ものシミュレーションを行った。その結果、両方の形態の光合成が並行して働いている場合、全実行回数の24%で、温室効果を維持し古代の地球を温暖に保つために必要とされる大気中のバランスを作り出すのにじゅうぶんな量のメタンが生成された。

モデルのパラメーターは、昔の地球を調べる目的のためだけでなく、近年発見が続いている系外惑星の環境を理解するのにも役立つように設定されている。「つまり今回の結果は、太陽が暗かった古代の地球上だけでなく、暗い恒星を巡る地球のような系外惑星上に、約24%の確率で安定した温暖な気候が作り出されると解釈できます」(Reinhardさん)。

系外惑星「ケプラー22 b」の想像図
太陽から地球に届くのと同程度の量の光や熱を中心星から受けている系外惑星「ケプラー22 b」の想像図(提供:NASA/Ames/JPL-Caltech)