キュリオシティが発見、火星の古い堆積岩中の有機分子や大気のメタン濃度の季節変化

このエントリーをはてなブックマークに追加
NASAの火星探査車「キュリオシティ」が、約30億年前の堆積岩から有機分子を発見した。また、大気中のメタン濃度が季節変化することも発見した。

【2018年6月13日 NASA

NASAの探査車「キュリオシティ」は2012年に火星に着陸して以来、火星の約3年(地球の約6年)にわたって探査を続けている。キュリオシティの大きな目的は、現在あるいは過去の火星に、生命そのものや生命活動の痕跡、生命が存在しうる環境がある(あった)証拠を見つけることである。

キュリオシティは探査地点のゲール・クレーターで、泥岩とよばれる堆積岩にドリルで穴を開けてサンプルを採取した。この岩は30億年ほど前に、太古の湖の底に溜まっていた泥から徐々に形成されたものとみられている。

探査ターゲットの岩石「Buckskin」に到着したキュリオシティ
ゲール・クレーターの中央丘であるシャープ山の低い場所に位置する、探査ターゲットの岩石「Buckskin」に到着したキュリオシティ(提供:NASA/JPL-Caltech/MSSS)

この堆積岩のサンプルをキュリオシティに搭載されている分析器「SAM」のオーブンで加熱し、放出された物質を計測したところ、ベンゼンやトルエン、プロパンなどの有機分子が検出された。有機分子とは主に炭素と水素からなる物質で、酸素や窒素などが含まれることもある。検出された有機炭素の濃度は火星起源の隕石のものに近く、過去に検出されていた火星表面の有機炭素の約100倍だった。

キュリオシティは2013年にも塩素を含む有機分子をクレーターの一番深い部分の岩から検出している。今回の発見で、太古の湖でできた堆積岩から見つかった分子リストに新たな物質が加わったことになる。

また、分析器SAMによる大気中のメタン濃度の測定から、濃度が季節変化を示すことも明らかになった。ゲール・クレーター付近の大気中のメタン濃度は、赤道のやや南に広がるこの地域が温暖になる夏の数か月間に高くなり、冬には低下するというパターンを繰り返している。「メタンの濃度が繰り返し変化する様子が見られたのは初めてのことです。キュリオシティが長期にわたり観測を続けたおかげで、こうしたパターンを知ることができました」(NASAジェット推進研究所 Chris Websterさん)。

有機分子は通常生命と関連があるが、非生物学的なプロセスでも形成される。たとえば有機分子の一種であるメタンは、岩石と水との科学的な作用によっても発生する。したがって、古い堆積岩中に様々な有機分子が発見されたことも、メタンの大気濃度が季節変化を示すことも、必ずしも生命の存在を示す証拠となるわけではない。「生命の存在を示す兆候があるかどうかはまだわかりません。しかし、これらの探査成果は、私たちの研究が正しい方向へ向かっていることを示しています」(NASA火星探査プログラム Michael Meyerさん)。

「今回の発見は、このまま探査を続けて生命の存在証拠を探し続けるようにと火星が語りかけてくれたようなものです。現在実施中の探査や、今後の探査から、さらに多くの驚くような発見があると確信しています」(NASA科学ミッション局副長官 Thomas Zurbuchenさん)。

キュリオシティから見たゲール・クレーター内の眺め(提供:NASA JPL)