- Springer
- 23.4cm×15.4cm、260ページ
- ISBN 978-0-387-09512-7
- 価格 4,148円
- ※洋書の価格は為替相場に応じて変動します。ご了承ください。
評者は、4半世紀前に出版されたComets: A Descriptive Catalogue(Gary W. Kronk著)という彗星の本を座右の書としている。だが、ハレー彗星の接近以前に出版された本なので、近年発見された、または回帰した彗星については調べようが無かった。そこに本書である。洋書としては価格が手頃だったため、思わず購入してしまった。家に帰る前の電車の中でパラパラとページをめくり、ほくそえんでいた評者を、他の乗客がどう見ていたかは想像に難くない。評者の脇には誰も座らなかった。
まず、さほど多くはないが、写真普及以前の彗星の木版画が貴重だ。彗星を見物する人々の嬉々たる姿が、色々と考えさせてくれる。1843年の大彗星や1880年の大彗星の木版画、1882年以降写真が普及し始める頃の大彗星のポートレートなどといった歴史的画像は、みな本書で初見となった。
また、評者が初めて出会った池谷・関彗星、コホーテク彗星、ウェスト彗星、百武彗星、ヘール・ボップ彗星、マックノート彗星などの記述には観望した思い出が蘇り、評者も意外と彗星オタクだったことに気づいた。大抵が変光星観測のついでだったが。ただし、ベネット、ホームズなど記述がない彗星もある。本書は過去に出現した彗星の全リストではないことをお断りしておきたい。特定彗星の詳細記録をたどりたいという方は、前出の本と一緒に調査されることをおすすめしたい。
本書はあくまでもピックアップされた彗星の記録集であり、彗星の物理学を書いた本ではない。その意味で、一般の天文アマチュアには面白く読めるはずの本で、英語の勉強のためにもぜひみなさんにおすすめしたい。さほど難しい英語表現はない。