- Princeton University Press
- 23.1cm×15.2cm、272ページ
- ISBN 978-0-691-13846-6
- 価格 1,911円
- ※洋書の価格は為替相場に応じて変動します。ご了承ください。
著者は米国のバンダービルト大学天文学教授とある。あいにく評者は著者の経歴を本書でしか知らないが、本書の内容は、英国の科学雑誌ネーチャー書評家テイラー氏の評 "Well-told....Provides a readable historical account of our knowledge of the solar system." が最も当を得ている。
表題の「冥王星は惑星か?」も、本書においては当然大問題であり、第10章から13章までの55ページと、ポストスクリプトとして2006年のIAUにおける議論の経過が後日談も含め21ページ、さらに冥王星の実態を紹介する付録に10ページを費やし、詳細に記している。その意味で表題は適切なものだが、本書の半分はその他の惑星および太陽系全般の発見史であると考えたほうが良い。
もちろん広く一般の方々を対象に書かれているので、数式や力学的表現は一切登場しない。この点はがっかりする方、ほっとする方両方いらっしゃるだろうが、いずれにしても英語表現は、表題をご覧になってもわかるように、われわれ日本人にもよく通じる簡易なものである。英語の勉強のつもりで、副読本代わりに本書をお読みになると良い。
また、すべてモノクロだが、図版は美しく、思わずスキャンして自分のものにしてしまいたくなるようなものが多い。特に演台に立つパーシバル・ローエルや、望遠鏡を覗くクライド・トンボーの肖像などは歴史的写真と言うべきだろう。
せっかくの星空フェアでも相変わらず星座とか神話の本が目立つのは、本当に残念至極のことである。日本でこういう本が出版されないのは、彼我の文化の違いばかりのせいなのだろうか。