評者は本書を価格1万円でも購入する。洋書専門店の天文書コーナーで発見したときは「あれっ、バーゲンコーナーだったかな」と錯覚したほどだ。表紙にも表示されているように、本書はIYA2009記念出版書。評者もそれを確認した上で、勇んでレジに並んだのである。嬉しかった。

本書を飾る多数の画像は、まるでハイビジョンでも見ているかのような、シャープでほれぼれとするほどの高画質。いて座の銀河中心を撮った画像は、画面を覆い尽くす全ての恒星が恒星として分解できるかのようだ。細かい暗黒星雲の模様もたどることが可能。画像の数と素晴らしさだけでなく、本書の大きな特徴は、世界各地の天文台と宇宙望遠鏡で撮影された最新の素材から編纂されていること。そして、可視光はもちろん、電波・ミリ波・赤外・紫外・超紫外・X線・γ線波長域で撮影された太陽や惑星・星団・ガス星雲・超新星残骸・銀河写真があふれているのである。太陽のスペクトル写真なんて、専門家しか見たことがないほどのモノだろう。これだけでも、本書を超安価と言わずして何と言おう。

画像の発信元はチリ・アタカマ砂漠セロ・パラナル天文台のVLT、ハワイ・マウナケア山のケック望遠鏡、同すばる望遠鏡、同ジェミニ望遠鏡、同ジェームス・クラーク望遠鏡、カナリア諸島ラ・パルマのロック・デ・ロス・ムチャチョスのスウェーデン望遠鏡、同MAGICγ線望遠鏡、オーストラリア・パークス電波望遠鏡、VLA、アルゼンチン・パンパ・アマリアのピエール・オージェ天文台、宇宙背景放射観測衛星WMAP、赤外線天文衛星スピッツァー、ハッブル宇宙望遠鏡、ヒッパルコス、太陽観測衛星SOHO、紫外線天文衛星IUE、同GALEX、X線天文衛星チャンドラ、同XMM−ニュートン、ガンマ線天文衛星インテグラルだと言えば、いずれも知る人ぞ知るもの。これはまさしく宝物。