- 岩波書店
- 四六変型判、110ページ
- ISBN 978-4-00-007484-1
- 価格 1,260円
評者はこれまでブラックホールについての普及書を何冊か読んできたが、それらがどうもいま一つだった。理由は、この本にお会いするまで実はよくわからなかった。すべてが理論家の頭、ブラックホールならぬブラックボックスの中にあるためかと茶化していたのだが、著者のような真の観測家が書いた、実在のブラックホールを説明する本ではなかったからだということに、この本を読んで評者はやっと気がついたのである。
ブラックホールが実在することは、今ではよく知られた観測事実である。ならばそれを暴き出そうとしている観測者に、そのあたりの苦労話を聞かないと、実態は皆目わからないのではないだろうか。宇宙最強のエネルギー源であり、動力源であるブラックホールが、宇宙形成においても黒幕であるなんて、評者は思いもよらなかった。
また加速器によるブラックホール生成実験や、フラット・ブラックホール、土星型ブラックホールなど最新話題にもふれられている。評者には長周期食変光星ぎょしゃ座εの伴星がブラックホールであるという説などに振り回された経験があり、この本によってブラックホールがより身近な存在であることを強く感じるようになった。ブラックホール観測に関心をお持ちの方はぜひ一読あれ。