- 岩波書店
- B6判、112ページ
- ISBN 978-4-00-007492-6
- 価格 1,260円
書評の書評を書くというのは、まことにヘンテコな気分になる。本書評読者のみなさんは、この書評を見て、この本に書かれている書評を読んで、紹介された本をお読みになるというワケだ。まことにややこしい!
でもここで評者は深く考えた。本書で書評を書いた9人の有名人(小久保英一郎氏・秋山豊寛氏・佐治晴夫氏・野本陽代氏・的川泰宣氏・井田茂氏・粟野諭美氏・須藤靖氏)は、さまざまな立場におられる。かつて天文少年だった天文学者、そうではなかった天文学者、天文学者と結婚されて天文につながった翻訳家、物理学者だった天文学者、天文少年だったロケット工学者、文学少女だった天文学者…。
少なくとも天文の普及を仕事とする身の評者にとっては、他の人の経験を知るまたとない絶好のチャンスだ。かくなるゴーイング・マイ・ウェイ的な観点から本書を読み、評者がかつて天文少年だったことを本当に幸せに思った。なぜなら、評者にとって星は本や頭の中にではなく、空に輝くものだったからだ。都会には星がないと嘆く方が多いが、ありますよ。ニ等星や三等星は双眼鏡で何百と見つかります。要はあなたが見るか見ないかです。本書を読んで、まずそれについて実感した。
次に、やはり、太陽や星、流星、星雲、そして銀河宇宙は、芸術や哲学や宗教等の形で、人の頭の中にも入り込んでくる。だから全人類に共感を持ってもらえるのだ。
9人の著者の方々がそれぞれ、思いっきり語った本書の価値は非常に高く、きっとあなたの人生経験に役立つはずだ。ただ少し残念なのは、紹介されている本が中途半端に古く、絶版の書が多いこと。評者の知る限り、新刊にも(読書週間特集で紹介させていただいたように)良書がたくさんあるし、徹底して古い本なら、例えばガリレオの「星界からの報告」、あるいはジーンズの「神秘な宇宙」、アーミティジの「太陽よ、汝は動かず」などなど、山だくさん。要はあなたが読むか読まないかです。