- 岩波書店
- 新書判、275ページ
- ISBN 4-00-430543-8
- 価格 819円
評者はあちこちのプラネタリウムやカルチャーセンターで、いつも「宇宙って不思議ですね」とお話をさせていただいている。宇宙があること自体不思議、地球が存在することも不思議、人間がいることはさらに不思議。そう思う方は、ぜひ本書を読もう。
著者も言うように、この45.5億年間に、様々な環境変化が地球におきた。その多くが生物の存在を否定しようとするものだった。だがなぜか生物はそれらを全て潜り抜け進化した。結果、人という特別な生物が誕生したのである。人類は宇宙について思いをはせ、自らの過去と将来を憂いあるいは期待し、天国や地獄などの死生観までを持つ特異な生物だ。その人類がいるのは決して空中ではなく、脚がつく地球である。この地球なくして人は物を考えることができないはずだ。なので、宇宙について考えるときにも、まず地球について理解を深める必要があると思うのは、筆者の考え違いであるとは思わない。固体地球の進化史から生命の進化史をとらえなおし、その因果関係を解明しようという著者らのねらいは斬新である。それらを正確に理解するには、地球物理学・地質学・古生物学や生物化学などの最新知識が必要だろうが、学際的に学ぼうと思えばさほど負担を感じることは無く、むしろ本書で著者らの考えのプロセスをよく理解することができる。本書を読み進めるうちに、関連科学へフィードバックするみなさんも多く出てくることと思う。
本書初刷は1998年に出されている。評者が読んだのは2009年刊の第18刷だが、それだけ本書は定評がある本といえる。地球史や生物進化に関心を持つ皆さんにぜひおすすめしたい。ただし、申し上げるまでもなく、多少の地質学的知識は要求される。また、著者は高校生にも読んでもらいたいと後書きで述べておられるが、それはちょっと難しいかもしれない。ともかくそれだけ本書は最新かつ高度な内容を有している。