- 講談社(ブルーバックス)
- 新書判、353ページ
- ISBN 978-4-06-257602-4
- 価格 1,197円
書評の最初から言うのも何だが、滅茶苦茶おもしろい。この本を読む間評者の頭から常に離れなかったのは、「人間だって物質だ!」という筆者が好まぬ唯物史観だ。でも、物質に物を語らせるという発想そのものがユニークで、なおかつ、物を言うはずがない物質について本当に見抜き知り尽くしている著者でない限り、ここまで詳細に説明できるはずがない。
通りいっぺんしか勉強していない科学者では書けるはずがない、内容の濃すぎる本である。まるで天体物理学の本ではないかと思えるほど、宇宙や銀河、太陽や恒星、クエーサーや中性子星、ニュートリノやWIMPなどなど、その本質に見事に迫っているのだ。本書の原題(FROM QUARKS TO BLACK HOLES:INTERVIEWING THE UNIVERSE)からして「宇宙」を語っている。
究極の文系を自認される訳者(訳文はこなれていてすごくわかりやすい)の、「どんな科学書を読むよりも面白くためになる」とのご意見に、評者も心より同感する。最後にもう一度、この本がベストセラーにならないはずがない。そうならないなら、日本の科学教育はお先真っ暗だ!