- 講談社
- 新書変型判、180ページ
- ISBN 978-4-06-272545-3
- 価格 880円
本書は第4章『「惑星X」の正体』、から読むと良い。探偵小説で言うところの犯人を知りたいがために後ろから読む、のをおすすめするわけではない。この部分は、一部をリカフィカさんが書いたからである。リカフィカさんの研究の動機と研究への熱意がヒタヒタと伝わり、それに対する向井先生の適切な指導と、先生ものめり込まれていく経過が如実に読み取れるのである。
続いて第1章『「惑星X」発見の衝撃』を読んでいただきたい。すると、本書出版の動機がわかるだろう。もちろん「惑星X」はまだ発見されていないから「X」なのだが、ここまでくれば、「惑星X」は「あってもよい」を通り越して、「無くてはならない、あるはずだ」になるはずだ。
惑星Xという名前を最初に用いたのは、火星人で有名なパーシバル・ローエルだ。ローエルは海王星外惑星を発見しようとして、海王星がそうであったように、天体力学を使って「惑星X」を探した。だが生前に発見することはできず、その遺志がローエル天文台助手クライド・トンボーによる1930年の冥王星発見につながったことは、本書第2章と第3章に書かれているとおりだ。
だが、もちろん本書での「惑星X」は冥王星ではない。質量が地球の3割から7割、表面が氷で覆われた、地球よりやや小さい程度。近日点距離80天文単位、遠日点100〜175天文単位、公転周期1000年程度だという。もちろん現在は未発見だが、惑星Xが存在しないと太陽系外縁天体の軌道を力学的に説明できないという点が重要である。2008年秋から開始されたアメリカ・台湾・ドイツ・イギリスの共同観測計画の成果が期待されているのだ。
われわれが実にスゴイ時代に生きているというのが、評者の正直な読後感だ。惑星Xという、まだ見ぬ永遠の恋人の顔を想像しながらみなさんに本書をご紹介したい。