- 講談社
- 17.6×11.4cm、272ページ
- ISBN 978-4065020081
- 価格 1080円
著者は東大大学院で地球物理学の博士号を取られた後、米国に移住し、現在エール大学の教授となられた方。本書は、水を主題に地球について物理学的に語った本である。評者も大学で多少地球物理学を学んだが、当時それは殆ど地震学で、地球内部構造が主であった。それも肝心の地震計は、月にも他の惑星にも設置されていなかったので、要するに地球しか研究対象がなかった。授業を受けながら、果たしてこれは一般論なのだろうかと首をかしげたものである。
だが今は全く事情が異なる。そう、3000も4000も見つかった系外惑星のせいだ。表面反射率の時間変化やスペクトル分析などから、幾つかの系外惑星に水が存在することが議論されるまでに至った。読者の皆さんは、水が地球に存在することが当たり前のように考えてはおられないだろうか? でも、決して当たり前ではないのですよ。なぜなら地球の水の全質量は、地球の全質量のたった0.056%しかないのだから。しかもその大部分が、目に見える水の海洋や河川ではなく、マントルなど地球内部にあるという。そして、地球の水という存在を考えるだけでも、実に謎だらけだということを本書で知ることができますよ。生物と水という観点からも、今や宇宙生物学という新分野のめざましい発展が期待され、本書はその手がかり足がかりを与えてくれる必読の本なのだ。お勧めします。