- 講談社
- 260ページ
- 978-4065180945
- 定価 1980円
題名そのもの、本書は宇宙における(もちろん我々人類にとっての宇宙はこの宇宙しかないのだが、そこにおける)レアアースなどを含めた全ての元素の形成経過を紹介したものだ。評者の学生時代は、科学の中で遙かに遠い存在だった生物と化学が、今や手を共にできるほど近い存在になったというのが、本書の読後感である。
中性子星の合体によって金やプラチナ、レアアースなどが作られるプロセスが、あるいは宇宙の最初期に水素とヘリウムが、また炭素と酸素、鉄や重金属元素が作られたプロセスが、昔は仮想の話だったが、今や本書に語られるように語ることができるのだ。評者は、カルチャーセンターの受講生の年配の皆さんに、本書に沿って説明したところ、よくわかったとのご意見・ご感想をいただくことができた。よって、読者の皆さんにも本書評でご案内することにした。
それにしても、以前の国立天文台の諸先生方は、評者のようなアマチュア観測家にとっては、同じ穴の中の狢(ムジナ)で仲間のような近しい存在だったが、著者がそのような化学者の天文学者だとは、本当に時代が変わった! というより化学が科学に変わった。この言い方、化学者の皆さんに怒られますね。でも、昔の化学は、少なくとも天文学とは縁遠い存在だった。だって、化学実験室の天井には、観測室のようなスリットはありません。