- 講談社
- 256ページ
- 定価 1100円
本書は、もちろん検閲官とか監察官とかいう職業の人の話ではない。ましてやSFでもフィクションでもない。まともな天文書である。第1章が一般相対性理論、第2章がブラックホールと膨張宇宙論、第3章がペンローズの特異点定理、ペンローズの提案「裸の特異点」の正否、第4章が現時点での物理学の進み具合、ブラックホールの面積増大則、ブラックホールの熱力学等々、まぁまぁとんでもなく面白い内容なのです。
評者はある書店科学書コーナーで思わず立ちすくんでしまったのだが、ブルーバックス・シリーズの一巻だったからホッと一安心、辺りを見回してSF書のコーナーではないことを確認したほどだ。著者がブラックホールの大家であることを知っていたことも一安心の要因となった。
評者が講師を務めるカルチャーセンターの受講生の中にも、ブラックホールに強い関心を示す方々が多くおられ、今やブラックホールは日常会話用語になった感さえある。一方では宇宙の膨張が叫ばれ、片一方ではまるでそれと反対の印象すらあるブラックホール理論と、どう整合するのであろうか。本書は、現代物理学の最前線を学ぼうとする方にぜひお勧めしたい、真面目な科学書だ。