- 講談社
- 640ページ
- 定価 1980円
読者の皆さんは、「自分が死んだら、天国で家族達を必ず見守っているからね」と信じておられますか? 残念ながら、それは不可能だと評者は考えています。あるいは「地獄から呪っているからね」と恨めしそうに考えている? いずれも不可能です。だって、天国も地獄も誰も見たことがないから。見えないものは実在しない。神様も閻魔様もいないのだ。少なくとも、地球から470億光年の宇宙の果てまでは、居場所がないのだ。評者は少年時代、ゲジゲジその他の毒虫達が天国で氾濫しているかもと考えたことがあります。だって、それら毒虫達は、それが仕事であり、生存の糧なのだから。
しかも現在、宇宙は更に膨張しており、やがては1兆光年を超えるとも言われ、いよいよ天国は遙かに遠くなる。ビッグリップかサイクリック宇宙かビッグクランチか、いずれにしても、そんな宇宙に天国や地獄があるだろうか。
本書著者は米・コロンビア大学の理論物理学者で数々の著書を書いている。そのお兄さんは、クリシュナ教徒の指導者だった。評者も家内も息子娘も20年以上前はある団体の熱心な信者だったが、あることが理由で今では足を踏み入れていない。宗教ってそんなものなのだ。神も悪魔も仏様も、実は人間が想像(創造)したもの。従って天国その他は、この宇宙には存在しない。600ページ超の本書は、実に読み応えがある本である。