- 講談社
- 272ページ
- 定価 1100円
先ずイチャモン。生命があるのかではなくて、生命がいるのかではありませんか。それはともかく、元々ご専門であるインフレーション宇宙論からスタートし、宇宙の広大さが生命がいる基本なのだということを論じているのが本書である。
今や評者も毎夜観測をしている話題のベテルギウスの超新星爆発についても、そのメカニズムが詳しく論じられている。大質量星中心核の玉ねぎ構造なども面白い。それによって鉄より重い重元素がモリブデンなどのとくに植物にとって必須元素となることや、動物にとってはモリブデンとヨウ素が重要元素で、代謝調節に極めて重要な働きを果たすという説明は、生命が宇宙空間に誕生する重要なポイントとなる。
ただし、生命が誕生するには、その住みかとなる惑星が必要なことは申し上げるまでもない。さらに、大気温度や水の存在など大局的なことばかりでなく、ありとあらゆる細かい必須事項があることは、人間を含む動植物の存在が、哲学・宗教・社会学と全く無縁で完全に科学の範疇であることが、本書によって明らかとなった。読者の皆さんにはそのあたりをぜひ読み取っていただきたい。
少なくとも、宇宙にインフレーションが起こり、自己複製するRNAが誕生し、右巻き・左巻きが生じたことなど、要するに生物学が必須なのだ。面白いですよ!