- 集英社
- 192ページ
- 定価 858円
本書読了後最初に感じたのは、物理学がまさしく科学、特に宇宙科学の「基本のキ」だなということだった。だって、そうでしょう、宇宙はモノでできているのだから。そのモノがどうして発生し(創造されたモノでなく自然に)どのように互いに作用し合い、どのように消滅していくのかは、すべて物理法則によっているのだから。それを解明し、確立させたことによって、本書著者のお一人で第一章を執筆された小林誠先生は「素粒子の標準模型とCP対称性の破れ」でノーベル賞を受賞されたのだ。
タイトルこそ難しそうだが、文章は易しいですよ、ご安心を。第二章「加速器実験の歴史」、第三章「小林・益川理論を検証せよ〜PART1」、第四章「同PART2」、第五章「ニュートリノとCP対称性の破れ」第六章「新しい物理と加速器科学の未来」は、小林先生の教え子さん達5名が共同執筆されている。
評者が半世紀以上前の学生時代、物化生地の中で、地学以外で親しみやすかったのが物理である。おかげで、物理専攻の友達が多かった。化学の人たちはいつも実験室で試験管やフラスコを握っていたし、生物の人ときたら天文なんて関係ないと鼻で笑われた。宇宙は物質で構成されているのが間違いなし。ようやく最近、宇宙の他の場所にも生物が居そうになってきたが、本書を読んで、宇宙の基本構成体に思いをはせていただきたい。