- 小学館
- 381ページ
- 978-4093887021
- 定価 1870円
評者は半世紀前から仕事柄、ギリシア神話を知ることが大事な仕事だった。特に五島プラネタリウムでの前半30分の星座解説に欠くべからざる知識だったからだ。故に洋書から和書に至るまで、所蔵の書籍を読みまくった。もちろん、先輩解説員の方々の投影解説も聞きまくった。だが、それらはあくまでお話で、宗教や民族史とは想像もしていなかった。
今の今、本書に出会ってその考え方を捨てた。それが思想や宗教、民族の衝突だったからである。星空に興味を持っていただくための方便ではなくなったのだ。それをきっかけとして、改めて古書店で阿刀田高著『ギリシア神話を知っていますか』、ブルフィンチ著・野上弥生子訳『ギリシア・ローマ神話 付インド・北欧神話』、新刊書店で小林登志子著『古代オリエントの神々』、三浦佑之著『古事記神話入門』、筑紫申真著『日本の神話』、吉田敦彦著『一冊でまるごとわかるギリシア神話』計6冊を立て続けに読みまくった。結果、神話が民族史だという結論が確信に至ったのだ。
本書著者は、元TBS報道記者。そのジャーナリスト魂が文章の各所に氾濫している。メインテーマの第三章「オリュンポスの神々とギリシア文明の遺産」は、なぜギリシャ文明がキリスト教に敗北したかとか、民主主義のルーツだったなど興味深いが、他にも多神教の日本神話やヒンドゥ教と仏教とのせめぎ合いなど、興味深い話が盛り沢山ありますよ。