- 小学館
- 225ページ
- 定価 2860円
2020年6月10日は、時の記念日制定110周年だった。なのに、国立天文台発行のカレンダーに「時の記念日」の表記がなかった。評者は同天文台の売店でカレンダーを購入し、帰宅後気づいて「えぇっ」となった。確かに国立天文台がその日を制定したのではないが、国立天文台が“時”を測定しているのに…。事程左様に時の記念日は無名なのだ。そして「時」そのものも…。
本書は、それでもなくてはならない「時」をテーマとし、1873年(明治6年)に大隈重信や板垣退助らによって導入された太陽暦(いわゆる西暦)の日本における歴史と、それを測定するための道具となる時計の発達史が述べられた、実に貴重な本である。読者の皆さんは、太陰太陽暦の詳細や、和時計をご存じですか。ご覧になったことはありますか。実は、明治・大正期の日本の近代化の背景には、「時」の近代化が、西洋諸国と交流するのに必要不可欠だったのだ。だって、「今なんどきだい?」と聞かれて、「八つ時」だとか、「丑三つ時」だとかで、現代の私たちはわかります? また、零時一分が、正午過ぎか真夜中1分過ぎか、不明だという議論はわかります?
本書は、面白いエピソードが交えてあり愉しく読め、目を見張るばかりです。今までになかった「時の日本史」です。