- 新潮社
- 新書判、223ページ
- ISBN 978-4-10-610238-7
- 価格 903円
本書の帯には「冥王星はなぜ外されたのか」の文字がある。2006年のIAU総会は「冥王星騒動」とも言うべき社会現象を起こしたが、惑星定義委員としてその渦中にいた著者による一般向けの解説書。太陽系の仲間たちの姿を順に紹介し、注目の惑星定義を解説する最終章にたどり着いたときには、帯の疑問に自ずと答えが出るはずだ。
本書70ページにある「子供は、幼児の時には、自分中心の世界観を持っている。成長するにつれて、次第にその行動半径を広げ、自分の世界を拡大していく。同時に、自分という存在は、他の人と変わりない大勢いる人間の中の一人なのだ、ということを認識していく。人類全体の宇宙観の変遷は、まさにこれと同じ過程を辿っているといえるだろう」という言葉に評者は著者の温かい(多分ご自分あるいは近親のお子さんへの)眼差しを感じる。このようなことを、本書では随所に見出せるのだ。もちろん、本書では現役天文学者、とくに太陽系研究者としての最新の専門知識を、類書には見られない優しい語り口で解き明かしてくださる。実に良い本である。さらに、本書の主題の一つで、2006年のトップニュースになった「冥王星降格」の裏話も、現場に参加され当事者として苦心された著者の説明は説得力が強烈である。経過と経緯が良くわかってありがたい。決して入門書ではない。