- 新潮社
- 224ページ
- 定価 836円
評者はチベット問題や香港自治問題など多くの国内問題を抱えている中国について、多大な危惧を懐いている。それらばかりでなく、台湾や日本、あるいはミャンマー、米国やロシア・北朝鮮との外交問題など、今や様々な問題を通して、この国の政権は一体何を考えているのか首を傾げざるをえない。また、東シナ海の安全や領海問題など、日本の安全保障にも大問題を生じさせている。というか、読者の皆さんもご存じのことと思うが、月や火星の領土化など、実は地球ばかりでなく、現在、中国は宇宙でも揉めているのですよ。それに今ではかつてのソ連が誇っていた宇宙支配を、今や中国が肩代わりし始めている。本書のタイトルからおわかりになるように、米露日がボヤボヤしていると、もう後数年で結着がつきそうな事態になっているのだ! 本書の著者は、筆者よりほぼ一回り若い方だが、国際法や宇宙法がご専門の法学者で、著者紹介を見ると、防衛大学校などで教鞭をおとりになった方。10年近く内閣府宇宙政策委員会の委員をなさっている方で、評者などとても足下にも及ばない博学な方だ。法学ばかりでなく、この方面の科学技術の知識も長けていることは、本書を読めばたちどころに判る。宇宙開発が夢の世界ではなく、人間の欲の世界、共産主義とか資本主義とかではなく、あぁ、これからの世界はどうなるのだろうか、暗澹たる思いに駆られてしまうのは、評者だけだろうか。ぜひお読みください。