- 中央公論新社
- 17.5×11cm、304ページ
- ISBN 978-4121025074
- 価格 1080円
ともかく本書は第一級で面白い。それも破格と言って良いほどの科学書として、である。なにしろ著者は、あの東京大学大学院航空宇宙工学専攻を2002年に卒業なさったバリバリの研究者。対する評者は1969年に東京学芸大学教育学部地学科天文学専修を出たしがないプラネタリウム解説員、比べようがない。故に、本書67頁で「あなた自身から電磁波を出そうとしたら身体を6000℃くらいまで温めればよい」と、堂々と言えるのだ。科学者の神髄といえるだろう。
本書を読み始めるに当たっては、まず後書き(おわりに)から読もう。大人の科学バーという催しで10回にわたり語られた内容をまとめたモノであるそうだ。そのような催し物があることは聞いてはいたが、行かなかったこと誠に残念無念! と同時に、お子さんや奥様への思いやりは、さすが大人だと思う。こういうことが判ったら、おもむろにはじめにに目を移そう。
宇宙は全宇宙の99.9999…%というあたりから、もう科学そのもの。その後は第一章から第八章まで宇宙を突っ走るという寸法。評者も一応科学を学び、科学が一番面白いと思っているが、それでも最近の先端宇宙科学がスゴイと思わせてくれて、本書評のためにこれほど時間をかけて隅々まで読み通したことは、最近無かった。たとえば、イオンロケットのイロハからエヒモセズまで丁寧に解説してある本は、これまでお目にかかったことがなかった。太陽系内ばかりでなくケンタウルス座α星系への移住など、最早老人の手ではなく、頭に負える話ではない。面白いですよ。